国内

医療のオンライン化に本腰 政府、自宅で診察から薬処方まで

 政府は、患者が自宅にいながら医師の診察、薬の処方、配送まで一貫して受けられる「医療のオンライン化」に本格的に乗り出す。新型コロナウイルスの感染拡大でニーズが高まる中、特例で認めている初診時からのオンライン診療を当面継続。2022年にかけて関係機関での患者データの共有や、電子処方箋の全国運用も始める。ただ、医療側には安全性を懸念する声もあり、対象疾患などをめぐって慎重な検討が必要となりそうだ。

 政府は行政、教育、医療分野などのデジタル化、オンライン化を進める方針で、7月に取りまとめた経済財政運営の指針「骨太方針」に「診察から薬剤の受け取りまでオンラインで完結する仕組みを構築する」と明記。マイナンバーカードを核として個人情報の一元化を進め、21年3月からは健康保険証としても使えるようにする。

 厚生労働省は新型コロナの院内感染を防ぐため、今年4月から特例で、医師が電話、スマートフォンやタブレット端末のカメラ機能を使い遠隔で診察するオンライン診療を初診から限定的に認めている。今月6日の検討会では、この特例を当面継続することを決めた。

 紙のやりとりを不要とする電子処方箋の全国運用も22年夏から始まる。また健診や手術歴などを患者と医療機関、薬局がオンラインで共有できるシステムを22年度までに開始。災害時に、患者が普段かかっていない医師でも診察しやすくなるほか、患者にとっても同じ薬の重複投与を避けられるなど利点は多い。

 しかしオンライン診療は対面よりも得られる情報が少ないため、重い腹痛や目の外傷、アレルギー性疾患など患者の状態の見極めが難しい治療には向かないとされる。日本医師会も「患者の情報が不足する中で問診と視診だけの判断になる」と慎重姿勢を示すなど、早急な規制緩和には反対論もある。

 このほか患者の医療費負担を計算するには健康保険証の資格確認が不可欠で、システム構築には「越えるべき課題は多い」(厚労省幹部)としている。

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