特集 2019年2月19日

スーッと動け! みそ汁のお椀

みそ汁のお椀がスーッと動く現象を、狙って起こします。

みそ汁のお椀が突然スーッと動く現象、あれを狙って起こせたらおもしろいと思った。色々やってみたら分かったことがあるのでご報告します。

1987年東京出身。会社員。ハンバーグやカレーやチキンライスなどが好物なので、舌が子供すぎやしないかと心配になるときがある。だがコーヒーはブラックでも飲める。動画インタビュー

前の記事:「雪山でパラグライダーなんて楽しいわけがない」やるまではそう思っていたんです


お椀がスーッと動く現象、ありますよね

家で晩ご飯を食べていると、みそ汁のお椀が突然スーッと動くことがあると思う。僕は生涯で2回ぐらいしか経験していないが、びっくりするのでその時のことをすごく鮮明に覚えている。

最初に見た時は、非科学的な色々なことを一瞬でブワーッと考えた。妖精とか小人とか超能力とか魔法とか勇者の血族とか、そういうことだ。

でも実際はそういうことではない。僕は選ばれしものではないのだ。下の図のようなことが起こっているみたいだ。

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食卓やお椀が濡れていることがポイントみたいだ。確かにご飯をドタバタ準備した時に起こっていた。
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スポーツができるぞ!

これ、狙って起こせたらすごく楽しんじゃないか。そう思って机をほんの少し傾けお椀を濡らし、お湯を沸かしてそっと注いだらお椀が動いた。

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動いた!すごい!

間を置いて動く感じがすごくいい。

意思があるみたいに少しずつ移動した。かわいい。仕組みを思い返すと机の傾きで滑っているだけなんだけど、ほんの少しの傾きで滑るのでパッと見ただけだと勝手に動いたみたいに見えるのだ。意思を持ったお椀。

これはいいぞと思って、デイリーポータルZの企画会議で「お椀でエアホッケーをやります」と宣言をし、担当編集の藤原さんにも動画を送った。

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「他にもスポーツができそうですね」という話になった。
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3種類スポーツを考えました。

『近代お椀三種』としてオリンピックの競技化を目指そう。

エアホッケーはどうすればいいのかよく分からなかったので競技にできなかった。深く考えずにしゃべるクセがある。

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お椀が動くポイント

競技化にあたって、ここでお椀が動くためのポイントを整理しておこう。色々試した中で最適と思った方法が以下の手順である。

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まずはお椀がよく滑るツルツルした机を用意する。

そして、下に何かをかませて机を傾ける。

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薄い雑誌ぐらいの高さでいい。

傾けすぎると何もしなくてもお椀が滑るし、滑っても不思議に見えないので注意。

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そして、お椀を用意する。大きいダイソーに行って、一番薄いものを買ってきた。

お椀はなるべく軽くて薄いものが動きやすかった。みそ汁の熱が下に伝わりやすいからだろう。

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お椀によって厚さがけっこう違う。右はあまり動かなかった。
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さらに熱を伝えるために、フタをするのもよかった。(お椀用のものがなかったのでマグカップ用で代用しました)
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そして机とお椀をよく濡らす。
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濡らしたら、お椀がよく滑るかチェックしてセッティングは終了。
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そっと、沸かしておいたお湯を入れる。

あとはじっと見つめていると、突然音もなくお椀がスーッと動く。おめでとう。びっくりしたりキュンキュンしたりしよう。

しかし万が一、それでも動かない時は、お椀の、机に接する部分から水蒸気が漏れている可能性がある。

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こんな感じでプツプツしていたら水蒸気が漏れている。他のお椀に取り替えてまた試してみよう。
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動かないな

お椀が動くポイントも分かった。準備は万端である。藤原さんに会議室を借りてもらった。

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ここが競技会場となる。

まずはデモンストレーションに、動くお椀を見てもらおう。ポットを借りてお湯を沸かして準備をする。机を傾け、お椀を濡らす。もう慣れたものである。

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お湯を注ぐ。
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動かない。動かないな。

 オフィスビルの奥、カードキーをかざして入る会議室で、ひたすらお湯の入ったお椀を見つめるが動かない。

上の4枚の写真は藤原さんに撮ってもらっていた動画から静止画を切り出した。なぜ動画を撮っていたかというと、動くと思っていたからだ。

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この写真は動画の画角を決めている様子。「この辺まで動きます」と言っています。
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お椀が動かないgif
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こういう時って、自分の意識がはるか上空に飛んでいくような気持ちになる。
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藤原さんは黙ってお椀を観察していました。

何度か試すがどうも動かない。いや、家では動いたのだ。家では動いたんですよ!

熱が出たと思っていそいそと病院に行って測ると、平熱だったりする、あの現象が起きている。

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家で動いたあの時、なんで藤原さんはそばにいなかったんだ。
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なんとかしようと思って、こうやったら動いた。

いや、そういうことじゃないのだ。これは別に全然不思議じゃない。

「お椀ってそういう性質なんですかね」と藤原さんが言った。本番に弱いのだ。動いてほしい時に動いてくれない。玄関にある懐中電灯か。使いたい時に限って電池がないのだ。

1時間お椀にお湯を入れては見つめ続けたが、動くことはなかった。

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最後の方はホワイトボードを外して台にさせてもらっていた。なんかツルツルしているなと思ったので。

「やぶれかぶれ」というタイトルで展示したい。

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すみませんでした。
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 うちにある、この机がすごかった

家ではお椀が動いたが、会議室では動かなかった。違うところといえば机である。会議室の机もツルツルしていてお椀が滑りそうだなと思ったのだが、家にある、あの机ほどではなかったかもしれない。

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この白い机。

この机は、僕が大学を卒業してはじめて一人暮らしをしようという時に母が買ってくれたものである。確か、足が折りたためて持ち運びやすいのと、大きさがちょうどいいので選んだのだ。もう10年近く、今は食卓として使っている。

Amazonに恐らくこれなんじゃないか、というものがあった。4,000円くらいだ。レビューをざっと見たけどお椀が動く、という記述は見つからなかった。

山善 折れ脚 ローテーブル

昔はパソコンを置いて作業台として使っていた。マウスパッドを敷かずにいたので、マウスがあった場所がスベスベである。

そうこの机、長きに渡って使われ続けたせいでスベッスベなのだ。

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そういえばお湯を入れただけで滑っていったりした。本当にスベスベなのだ。

ポイントはこの机だったのだ。10年使ったこの机があれば、お椀がスーッと動く現象を狙って起こすことができる。

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「お椀が動くためのポイント」最初の説明をやり直そう。まずこの机を買う。

Amazonの商品ページはこちらだ。これを買う。

山善 折れ脚 ローテーブル

そしてこの机を10年使う。スベスベにするために多少荒い使い方をしてもいいですが、もちろん大きな傷などはつけない方がいい。

10年後、雑誌などを使って机を傾ける。

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ここからは最初の説明と同じです。

もしお椀が動いたら、その時こそ、あなたの10年間が報われた瞬間である。おめでとう。

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しかし一人だ 

色々なことが分かったが、一人である。本当はこれを誰かに見てもらいながら楽しく実験したかった。仕方がないので最初に考えていた「お椀滑り」だけでも一人でやってみた。

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筆者のターン。この競技は机とお椀の濡らし方がポイントである。
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スーッ。
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藤原さんのターン。
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スーッ。
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犬のターン。

3人ぐらいいた方が盛り上がるだろうと思ってお椀は3つ用意していた。でも藤原さんと僕以外にこの記事の関係者がいない。仕方がないので、3人目はフリー素材の犬。

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犬は動かなかった。そういうこともある。

お椀がスーッと動いた距離

筆者 103mm

藤原さん 187mm

犬    0mm

こんな感じの結果だった。

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優勝は藤原さん!

 おめでとうございます!

この結果をご本人に伝えてコメントをもらおうかなとも思ったのですが、会議室では動かなかったしもう無邪気さで押し切るのも限界だなと思ったので、僕の心の中でだけチャンピオンとさせていただきました。


お椀を蒸してみたりしていた

記事の中盤で書いたお椀をスーッと動かすポイントですが、ここに行き着くまでに試行錯誤があった。
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お椀を冷蔵庫で冷やしてみたり
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逆に蒸してみたりしていた。
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何度もお湯を沸かした。待ち時間が多かった。

この試行錯誤の結論が「スベスベの机をさらにスベスベにするために10年使え」という再現しにくいものになってしまったことを大変心苦しく思っております。

もし使い古してスベスベの机がご家庭にある方はやってみてください。

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