撮影/山出高士
町中華を食べ尽くしてきた5人がチャーハンの名店について語る
2014年、ライターの北尾トロと下関マグロが結成した町中華探検隊は、2019年3月現在で、なんと隊員数80人を超える大所帯に。日々、各自が店を巡りレポートしたり情報交換をしております。いまや北尾トロと下関マグロの2人は『ぶらぶら町中華』(CS テレ朝チャンネル)に出演するなど、 町中華の研究は全国に及んでいます。
ちなみに2015年より町中華探検隊に加入した私、ライターの半澤は、町中華について過去にはこんな記事も書いております。
ぜひこちらもチェックしていただきたいです。
そして、そんな町中華探検隊の本がこのほど発売されました。
2015年より月刊誌『散歩の達人』で続けてきた連載が2月20日に単行本化されたものです。
今回はこの出版を機会に「町中華探検隊」の著者5名が集い、座談会を敢行。町中華を知り尽くした精鋭たちが「チャーハンの本当にうまい名店」を選出しようということになりました。
座談会参加者はこの5名
北尾トロ(ライター)
町中華探検隊隊長。流行っている理由がわからない店が好き。
下関マグロ(ライター)
町中華探検隊副長。珍メニューやオリジナルメニューがあれば必ず注文する。
増山かおり(ライター)
歴史に残る物件や町中華オヤジLOVE。 単行本では座談会パートを担当。
山出高士(カメラマン)
日本で一番町中華の厨房に立ち入ったカメラマン。
司会進行・半澤則吉(ライター)
定番料理から呑み方まで研究。中華密集地帯、荻窪在住。
以上、町中華を食べ尽くしてきた 『散歩の達人』連載メンバー5人が、熱くチャーハン愛を語ります。では、座談会スタートです。
町中華探検隊が語る「チャーハン論」
半澤:今回は事前にみなさんにオススメの店をあげていただきました。これを集計しランキング化。票が多かった上位の店をご紹介したいと思います。その発表の前に、簡単にみなさんの「チャーハン」哲学をうかがってもいいですか? やはり町中華にたくさん通っているだけあって、各々チャーハンへの想いをお持ちかと思います。
トロ:俺は「半チャンラーメン」じゃなく、「チャーハン+半ラーメン」で提供している店は、チャーハンに自信があるんだろうなって思って食べたくなるね。
半澤:セットメニューで気軽に味わえるのは、確かにチャーハンの大きな魅力ですよね。チャーハン推しのセット構成の店は魅力的。チャーハンを注文したくなります。
増山:私は単品としてのチャーハンも好きですね。
半澤:どのあたりが好きですか?
増山:初めて入る店でもチャーハンを注文するだけで、その店の食器、スープ、米、チャーシュー、そしてご主人の腕がよくわかるんですよ。そしてこれらが、よく伝わってくるチャーハンが、よいチャーハンだと思っています。
半澤:なるほど、なかなか深いですね。僕も困ったらチャーハンを頼むかなあ。ラーメンよりも店の個性が現れやすいメニューだと思うんですよね。山出さんはどうですか?
山出:私は麺が好きなので、実はチャーハンを頼む機会はそれほど多くないんですよ。でもね、店に入ってメニュー選びをしているときに、厨房で宙を舞うお米を見てしまったら頼まずにはいられない。 私はともかく「パラパラ系」のチャーハンが好きなので。
マグロ:僕は逆に町中華のチャーハンは「しっとり系」に注目しています。しっとり系は、「うま味」を感じるんですよ!
半澤:さすがにみなさん、チャーハンについて話が始まると一気に熱がこもってしまいますね! では、そろそろランキングを発表しましょう。
1位:【神楽坂】龍朋「いちど食べたら忘れられない味」
お待たせしました。ではランキングを紹介しましょう。
今回は5人の投票で、意外と票が分かれた印象でした。それでも、やなり人気どころには多くの人から支持を得ていましたね。では、さっそく発表します! 1位はコチラ。
▲チャーハン(770円)撮影 山出高士
増山:おおっ! 龍朋さん。これは納得の感じでは。
トロ:なるほどね!
山出:ゴロゴロしたチャーシューの店ですね。
マグロ:チャーハン単体としてもおいしいけれど、脇役のスープとの合わせ技がいいよね。オススメって聞かれるとどの店を推薦するか本当悩みますが、スープのうまさもあいまって1位に押してしまう店。いちど食べたら忘れられないチャーハンだよ。
半澤:チャーハンもスープも確かにレベル高いですね。
増山:私も龍朋さんには一票いれました! デカいチャーシューのうまさに驚くしかない! やっぱりあのチャーシューの大きさ、うまさは感動ものです。あんなにチャーシューが入っているとは思わないですよね。
マグロ:ご飯の中からもゴロゴロ出てくるんだよ。
増山:おいおい待ってよ、っていうくらい入っていますよね。肉塊のパワーってスゴいです。友達を連れて食べに行きたくなるチャーハンです。
半澤:僕もチャーハンのオススメと聞かれたら、とりあえず龍朋さんは名前を挙げたくなるなあ。立地がいいのも、いろんな人にすすめたくなる理由。神楽坂で、都心から行きやすいし!
撮影 山出高士
トロ:ほかにもたくさんおいしいメニューはあるんだけどね。
マグロ:今は、ほとんどのお客がチャーハンを頼む状況。チャーハン注文率が高すぎるんだ。
トロ:そうやって話題になるのもうれしいけれど、やはり町中華は自分の足や舌で確かめてほしいという思いもあるね。
マグロ:でも、それほどの人気を保つというのはスゴいことだよ! やはり名店。
半澤:テイクアウトのお客さんも多いですしね。チャーハン食べながら、持ち帰り用のチャーハンをお願いする人も少なくない。
増山:見ただけで歓声があがるチャーハンといったら、やっぱりここじゃないでしょうか。
お店情報
龍朋
住所:東京都新宿区矢来町123 第一矢来ビルB1
電話番号:03-3267-6917
営業時間:11:00~23:00(土・祝日は11:00〜22:00)
定休日:日曜日・月曜の祝日
2位:【荻窪】中華徳大「具が主役級にうまいチャーハン」
▲ホウレン草チャーハン+らんらんトッピング(1,120円)撮影 山出高士
半澤:2番目に票を集めたのはこちらでした!
マグロ:なるほどね、徳大さんか。それは票を入れ忘れてしまったなあ。
トロ:荻窪の人気店だね。
増山:徳大のチャーハンは本当おいしいです! コテッとした仕上がりがたまりません。 あと、具が主役級に旨いのも驚きますよね。
山出:パラパラ系が好きな私の方向性とは、真逆な感じですね(笑)。
半澤:徳大さんは濃厚さが魅力なんですよ。自家製ラードが効いてる。
マグロ:あと「らんらんトッピング」ね。
撮影 山出高士
半澤:そう、らんらんトッピング! 中華風オムレツみたいな卵のトッピングですが、あれは多くの人が頼んでいますよ。
山出:らんらんトッピングは確かに印象的ですね! あのビジュアルは面白い。
マグロ:このトッピングと合わせると、ナンバー1といってもいいんじゃないかな。
増山:らんらんトッピングはチャーハン以外のメニューにもつけていいから、人気だよね。
トロ:らんらんトッピングだけっていうのは、やってもいいの?
半澤:味付けがしっかりしているから、それだけでもお酒が飲めそうですね。でも、さすがにたまごだけを頼む勇気はないですが(笑)。やはりチャーハンと一緒にかっこみたいですよ。
増山:店主の青柳さんが、作り飽きたと言いつつも楽しそうに作ってくれるところもたまらないです! 味だけじゃなく「町中華」らしさも感じられる店ですしね。
半澤:チャーハンはもちろんだけど、ほかのメニューも充実しているから町中華入門編にぜひ足を運んでほしいですね。
お店情報
中華徳大
住所:東京都杉並区荻窪5-13-6
電話番号:03-3393-2082
営業時間:11:30~13:30、17:30~20:45LO(土曜は17時〜20:45LO)
定休日:日・祝
3位:【千駄木】一寸亭「ナルトが入っているのがポイント」
▲チャーハン(730円) 撮影 山出高士
半澤:第3位がこちら。
トロ:一寸亭は『散歩の達人』の連載でもチャーハンがおいしい店として紹介したね。
半澤:ここのチャーハンは確かに印象的。
トロ:やっぱりナルトがたっぷり入っているのがポイントだよ。
増山:色がピンク。ビジュアルの華やかさにもナルトが効いてますよね。
マグロ:見た目も素敵だけどナルトのおかげで、いい出汁が出るんだ。ファーストバイトから最後のひとくちまでずっとおいしくいただけるチャーハンですよ。
トロ:俺はあのチャーハン好きだなあ。チャーシューがそんなに好きじゃない俺としては、一寸亭くらいのバランスがちょうどいいよね。具材も味もほどよい!
山出:カニチャーハン(980円)、五目チャーハン(900円)も撮影しましたね。
撮影 山出高士
半澤:一寸亭はチャーハンの種類が豊富というのも魅力ですよ。こういうごちそう感のあるチャーハンは、ちょっと贅沢したいときにもいいですね。
トロ:ぼくはやっぱり普通のチャーハンからいってほしいけどなあ。どっちにせよ、一寸亭はチャーハンのオススメ店だよ。
お店情報
一寸亭
住所:東京都台東区谷中3-11-7
電話番号:03-3823-7990
営業時間:11:30~21:30
定休日:火曜日
同率3位:【三越前】大勝軒「ときめきを感じるチャーハン」
▲チャーハン(800円) 撮影 山出高士
半澤:実は同率でもうひとつ3位があります。コチラです!
マグロ:なるほど、三越前の大勝軒ね。ここのチャーハンは見た目がいいんだ。
山出:大勝軒のチャーハンは本当キレイ! 錦糸たまごがのった美しい姿が印象的でした。
増山:「ときめきを感じるチャーハン」だよね。
半澤:あのビジュアルは忘れられないですね。昭和8年創業の超老舗があのチャーハンを出しているというのもなんだかグッときます!
山出:しょっぱめのチャーシューが入っているのが特徴。刻んだチャーシューから出るうま味と塩味がグイッと全体の味を引き上げています。
マグロ:大勝軒はA定食(900円)ていうのがイチ押しで、ラーメンと半チャーハンの組み合わせなんだよね。だからラーメンにも合うんだよ。
撮影 山出高士
トロ:チャーハンが半分でも錦糸たまごはのっているの?
マグロ:のってるんですよ!
半澤:それはスゴいですね。お得感あるなあ。
山出:私はあのチャーハンのパラパラ具合が好きなんですよ!
半澤:あれは、大勝軒さんならではの技術ですよね。
山出:「これは家じゃ出来ないわ」と思うような、コメ一粒一粒に油とうま味のコーティングが出来ているものこそ、店で食べたいよね。
半澤:確かにあれはお店じゃないと作れません! 2階建てでゆっくりできるお店というのも、大勝軒さんのいいところですね。
お店情報
大勝軒(三越前)
住所:東京都中央区日本橋本町1-3-3
電話番号:03-3241-2551
営業時間:11:00~14:00 17:30~21:00(20:30LO)
定休日:土曜日・日曜日・祝日
チャーハン談義はまだまだ止まらない……ランキング外も名店ばかり!
半澤:ここまでランキング形式でお話してきましたが、実はほかにもいろいろな店の名前があがっていました。いずれも本当にチャーハンがおいしい店だと思うので、ぜひほかの店のお話も聞かせてください。
トロ:俺はここにあがってない店だと【三河島】すずきだなあ。
増山:すみません、パッとどういうチャーハンか思い出せないですね。
半澤:あそこはシューマイがおいしいですよね!
トロ: すずきのチャーハンは味が「ほどよい」んだよ。あんまりギトギトしてないし。
増山:そうだ、思い出しました。けっこうあっさりめだから、サイドメニューと食べたくなる感じでしたね。
マグロ:そう! シューマイとか餃子と一緒に食べられるくらいのあっさり加減がいいんだよね。
トロ:あとは俺は【新馬場】あおたのチャーハン!
半澤:あ、いいですね。リーゼントヘアのご主人の店ですね。確かにあおたのチャーハンはおいしかった!
トロ:よく炒めてある「懐かし系」で、バランスがいい。
マグロ:五目寿司みたいなビジュアルだったなあ。
増山:オーソドックスなのがやはりいいですね。
山出:私は【浅草橋】上海ブラッセリーが忘れられない。とにかくビジュアルにインパクトがありますね。チャーハンが赤いんですよ。
半澤:僕はまだうかがったことがないんですよ。赤いってどういうことですか?
山出:紅ショウガが刻んで入れてあるの。あれが面白い。
半澤:紅生姜の赤なんだ!
山出:これがチャーハンに合うんだよ。ピリッとしたアクセントになって、とってもおいしいんですよ。
マグロ:あのチャーハンは永遠に食えそうだよね。
増山:私は【下北沢】珉亭が好きですね。あの店のチャーハンは絶対に忘れられない。
半澤:こちらも赤いチャーハンが有名だよね!
増山:あそこまで印象的なチャーハンってそうないよね。
マグロ:一回食べたらもう取り憑かれてしまう「赤い悪魔」だよね(笑)。あれは赤いチャーシューの色なんですよ。
増山:正統派でしっかりした味付け。店構えが渋いのに、あのカワイイピンク色というのがインパクトありますね。
マグロ:僕はほかには【信濃町】珍満がオススメ。昔近くに住んでいたからよく行ったんだけど、ひととおりメニューを網羅した後にたどりついたのが、チャーハンと餃子の組み合わせ! ちょっと薄味のチャーハンに、餃子がよく合うんだよ。
半澤:なるほど、確かに餃子と合わせるというのも手ですよね。
チャーハンについて語りだすと話が止まらなそうなので今回はとりあえずこのへんで。
ここにあげた店は何年間も町中華と向き合ってきた我々がオススメするので、確かにオススメではあるのですが、まずはお近くの町中華にも足を運んでほしいですね。
びっくりするほどうまいチャーハンが食べられるかも。町中華は、そんな宝探しのような楽しさであふれているんです!
町中華探検隊イベント情報
散歩の達人POCKET『町中華探検隊がゆく!』(交通新聞社) 発売記念トークイベント 町中華出前講座
日時:2019年3月28日(木)19:30〜21:00
会場:文禄堂高円寺店
チケット:イベント参加料¥1500+ワンドリンク
書いた人:半澤則吉
1983年福島県生まれ。2003年大学入学を期に上京。以来14年に渡りながく一人暮らしを続けている。そのため自炊も好きで、会社員時代はお弁当を作り出勤していた。2013年よりフリーライターとして独立。『散歩の達人』(交通新聞社)にて「町中華探検隊がゆく!」を連載するなどグルメ取材も多い。朝ドラが好き。