第三極の鍵は「モバイルコマース」、3倍成長する東南アジア市場を紐解く【Repro調べ】

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Photo by Timo Volz on Pexels.com

今月、国内・アジアで存在感を示す「ヤフーとLINEの連携」という大きなニュースがありました。特に会見で示された「GAFA・BATに対抗する第三極」という言葉は大きく、今後、中国を除く東・東南アジアでの市場に少なからず影響が出てくると思われます。

この波及効果については各所で議論が始まっていることと思いますが、本稿では特に東南アジアで勢いが増しているモバイルコマースの状況について共有したいと思います。

なお、本稿で言及しているデータや実績などは現在、私たちが展開するモバイル・マーケティングプラットフォーム「Repro」を展開する上で入手した情報に基づきます。現在、東南アジアにも展開地域を拡大しています。

東南アジアで急成長する「M-commerce」とは

まず、大前提として東南アジアでは、2017から2018年の間にモバイルショッピングアプリの使用が3倍以上になり、モバイルアプリの使用者数が28%成長で伸びている、という状況があります(Media OutReachの調査データより)。

このカテゴリを指し示す「M-commerce」とは、Mobile-commerce(モバイルコマース)を短縮した言葉で、モバイルデバイスで使用したお金の取引全てを指します。E-commerceの進歩であり、スマートフォンやタブレットデバイスを使用するだけで、ほぼどこからでも商品やサービスを売買できるという環境の変化に後押しされて生まれたカテゴリです。

拡大した要因としてまず第一に、接続環境が整ったことが挙げられます。現在、世界人口の90%が3G以上のネットワークを使用してインターネットに接続できますが、既に東南アジアの大半の国の首都圏では4G/LTEが当たり前です。次にモバイルユーザーの購買行動が変わるサービスが増え続けていることも拡大の後押しになっています。具体的にはいくつかのトピックを掲載します。

  • 非接触型ペイメントとアプリ内課金環境
  • 店舗などでのオフライン活用
  • ロケーションベース

では、それぞれをもう少し詳しく紐解いてみたいと思います。

非接触型ペイメントとアプリ内課金環境

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Photo by PhotoMIX Ltd. on Pexels.com

これにより事業者は、モバイルデバイスに寄り添った決済方法を提供できるようになりました。「現金またはカード」に比べ優れているというよりもモバイルデバイスでの購買体験をスムースにするというようなニュアンスだと捉えてください。

例えば、モバイルウォレットを使用すると、クレジットカードの詳細や配送先住所などを保存でき、オンライン購入時に、情報を再度入力する必要がないというようなメリットがあります。これは、スマートフォンで個人情報を入力する煩わしさを排除できます。

日本だとiOSのアプリ内課金を使ったことがある方も多いのではないでしょうか。あの1つの動作で購入が完結する体験が様々なプラットフォームで提供されているとイメージしてください。ちなみに今年のPwC Singaporeの調査では、このアプリ内課金は例えばタイで67%に、マレーシアでは17%から40%に増加、フィリピンでは14%から45%に利用率が増加してます。

日本でもおなじみのデジタルコンテンツも伸びています。例えば、タイには東南アジアで最大のE-Book Store「Ookbee」があります。彼らは主に、モバイルウェブをベースに市場を伸ばしてきましたが、モバイルアプリが重要なチャネルになってきております。

これはユーザが当たり前のようにモバイルアプリで定期購入しているという状況が背景にあり、結果、タイのコマース市場は2025年までに現状の4倍になると言われています。今後デジタルコンテンツのモバイル最適化は加速度的に進むはずです。

店舗などでのオフライン活用

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Image Credit : Gojek Food

ここまではラップトップでもできることなのですが、やはりモバイルの真骨頂はオフラインにあります。OPPOやXiaomi、VIVOは200米ドル程度でスペックの高いデバイスを提供しています。東南アジアで伸びているのはこの価格帯のデバイスです。

例えばNFC搭載端末で可能な非接触モバイル決済は、店舗で行われる支払いに使われています。デビットカードやクレジットカードを利用する代わりにレジ横に置いてある端末の近くにスマホをかざして支払いができる、日本でもよく見るあの光景ですね。

Apple PayやGoogle Pay、Samsung Pay辺りが代表的で、例えば銀行などローカルの事業者が普及の下支えをしていたりします。

また似たようなオフライン利用としてQRコードを利用したチケットがあります。例えば、空港にチェックインする際に、ひと昔前は紙を印刷してカウンターに持ってきている人をよく見ましたが今はほとんどいません。オンラインでチェックインを済ませ、スマホの画面に映るバーコードで荷物を預けます。

ロケーションベース

位置情報を使ったサービスです。

東南アジアの街を歩くと色々な国で、デリバリーのバイクが走っているのを目にします。代表的なところはGojekやGrabですが、滞在している私の周りを見渡すと実にシンガポールだけで十以上のフードデリバリーサービスが存在してます。これは全てモバイルアプリでサービスを完結させ、もちろん決済もモバイルで完了させます。

このようにロケーションをベースにモバイルでサービス提供を完結させるのはフードデリバリーだけでなくシェアリングスクーターやシェアバイク、シェア傘、配車など様々なサービスに拡大しています。

クーポンなどを使ったマーケティングも同様で、プッシュ通知やSMS、メールでクーポンが届くような体験が当たり前になってます。例えばインドネシアでラマダン(断食)が明ける時間になると、近くのお店から「ラマダン明けですぐにお店でご飯が食べられるよ」というメッセージを送る、みたいな体験です。

日本で実施しているような施策が東南アジアでもしっかりと通用する環境になっているのです。

いかがだったでしょうか。

CBREの予測によると、M-commerceの売上は、2021年までにすべてのE-commerceの売上の53.9%を占めることになるそうです。

特に東南アジアはラップトップを知らない、遅いインターネットを知らない世代が消費者のメインとなる市場なのです。モバイル決済は確かに不便な時代がありました。しかしそんな体験をしたことのない世代は何一つ恐れなくモバイルで購買します。それが当たり前なのです。東南アジアだけでなく、インドや中国でもM-commerceが爆速的に伸びてます。

今後はセキュリテイや信頼、サイトやAppの速度・チェックアウトの体験向上といったポイントがテーマになってくると思われます。今回は一旦ここまでということで。

<参考情報>

本稿はweb・モバイルアプリ向けのCE(カスタマエンゲージメント)モバイルマーケティングプラットフォーム「Repro」のシンガポール子会社、Repro Singapore、Tsubasa Sasakiによるもの。Twitterアカウントは@tsubasasa2。彼らの事業や採用に興味がある方、彼らとの取り組みを希望する企業はこちらからコンタクトされたい

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