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「プロ野球の移籍選手は背番号30が最多説」を検証する

オリックス・K-鈴木ⒸSPAIA
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「高野圭佑 阪神タイガース」のツイッターが発端

巷間で取り沙汰されている、プロ野球に関する噂がある。発端は「高野圭佑 阪神タイガース」のツイッターアカウント。5月28日に「2020年現役NPB選手。他球団から移籍した選手が1番多く使われてる背番号。30番説」とツイートした。

30と言えば、かつて江川卓(元巨人)が背負っていた番号だ。さらにさかのぼれば大学野球と同様、プロ野球でも監督の背番号としてもお馴染みだった。数字としては1桁や10番台に比べると大きいが、決して「軽い」番号ではない。その30が移籍選手の最も多い番号とは、にわかには信じがたい噂だったので調べてみた。

2020年の背番号30の選手

2020年に30を背負っているのは巨人・鍵谷陽平、DeNA・飯塚悟史、阪神・高野圭佑、広島・一岡竜司、中日・阿知羅拓馬、ヤクルト・西田明央、西武・榎田大樹、ソフトバンク・佐藤直樹、ロッテ・石崎剛、日本ハム・宇佐見真吾、オリックス・K-鈴木の11人(楽天は空き番号)。そのうち、鍵谷、高野、一岡、榎田、石崎、宇佐見の6人は移籍組だ。

新外国人やドラフト指名されて入団した新人、育成契約選手などを除き、NPB内で移籍した選手が背負う番号は30が最多。他に飯田優也(ソフトバンク→阪神)、武田健吾(オリックス→中日)、濱矢廣大(楽天→DeNA)、松井佑介(中日→オリックス)、吉川光夫(日本ハム→巨人→日本ハム)の5人が背負う56や、00、27、42、58も移籍組が4人と多いが、6人が背負うのは30だけとなっている。「30番最多説」は本当だった。

2019年は移籍選手4人が「56」

現状は30が多いことが分かったが、過去の移籍選手は他にどんな番号を背負っているのだろうか。2019年オフから2020年にNPB内で移籍した選手は表の通り。

2020年移籍選手一覧


複数人が背負ったのは、16の松坂大輔(中日→西武)と涌井秀章(ロッテ→楽天)、7の鈴木大地(ロッテ→楽天)と福田秀平(ソフトバンク→ロッテ)の各2人だが、30は1人もいない。松坂、涌井のようなエース級、鈴木、福田のようなFA移籍の選手には若い番号を与えられる場合が多い。

続いて2018年オフから2019年の移籍組も見てみよう。

2019年移籍選手一覧


巨人の大型補強が話題になった2019年は少し偏りがある。先述した56の濱矢、武田、吉川、松井の4人を筆頭に、46も太田賢吾(日本ハム→ヤクルト)、下水流昂(広島→楽天)、成瀬善久(ヤクルト→オリックス)の3人が背負った。

さらに5は中島宏之(オリックス→巨人)と長野久義(巨人→広島)、27は炭谷銀仁朗(西武→巨人)と内海哲也(巨人→西武)、30は高野圭佑(ロッテ→阪神)と宇佐見真吾(巨人→日本ハム)、32は鍵谷陽平(日本ハム→巨人)と谷内亮太(ヤクルト→日本ハム)、35は三好匠(楽天→広島)と寺原隼人(ソフトバンク→ヤクルト)、39は菊池保則(楽天→広島)と秋吉亮(ヤクルト→日本ハム)、54は和田恋(巨人→楽天)とレアード(日本ハム→ロッテ)の各2人となっている。

移籍初年度は32だった鍵谷が2020年から日本ハム時代と同じ30に、同じく58だった石崎が2020年から阪神時代に背負っていた30に変更したことで「30番最多説」の一翼を担うことになった。

捕手の移籍が多かった2018年

では、2017年オフから2018年の移籍選手はどうだろうか。NPB内で移籍した選手は表の通り。

2018年移籍選手一覧


新天地で22を背負ったのが西田哲朗(楽天→ソフトバンク)、鶴岡慎也(ソフトバンク→日本ハム)、高城俊人(DeNA→オリックス)の3人。27は尾仲祐哉(DeNA→阪神)と大野奨太(日本ハム→中日)、29は伊藤光(オリックス→DeNA)と山下斐紹(ソフトバンク→楽天)、30は榎田大樹(阪神→西武)と市川友也(日本ハム→ソフトバンク)、56は飯田優也(ソフトバンク→阪神)と藤岡貴裕(ロッテ→日本ハム)の各2人となっている。捕手の移籍が多いのも2018年の特徴だった。

続いて2016年オフから2017年の移籍を見てみる。

2017年移籍選手一覧


この年はそれほど偏りはなく、42が山口俊(DeNA→巨人)と黒羽根利規(DeNA→日本ハム)、49が石川慎吾(日本ハム→巨人)と公文克彦(巨人→日本ハム)、58が屋宜照悟(日本ハム→ヤクルト)と金田和之(阪神→オリックス)、59が柿澤貴裕(楽天→巨人)と平良拳太郎(巨人→DeNA)、66が柳瀬明宏(ソフトバンク→阪神)と大松尚逸(ロッテ→ヤクルト)、67が田中浩康(ヤクルト→DeNA)とクルーズ(巨人→楽天)の各2人となっている。2020年で移籍選手最多の30は1人もいない。

移籍選手に30番が多いのは偶然?

最後に2015年オフから2016年の移籍選手も見てみよう。

2016年移籍選手一覧


3人以上重なった背番号はなく、0が木村昇吾(広島→西武)と栗原健太(広島→楽天)、60が乾真大(日本ハム→巨人)と白根尚貴(ソフトバンク→DeNA)、68が藤岡好明(日本ハム→DeNA)と川本良平(ロッテ→楽天)、69がザガースキー(広島→DeNA)と山内壮馬(中日→楽天)、70が近藤一樹(オリックス→ヤクルト)と米野智人(西武→日本ハム)で各2人となっている。

68、69、70や91(鵜久森淳志)など大きな番号が多く、30はいない。

総合的に見ると、2020年で移籍選手が最も多い背番号は30だが、偶然にも近年30を背負う選手の移籍が多かっただけで、意図して移籍選手に30を与えているという訳ではないようだ。

ちなみに高野が背負う阪神の背番号30は、これまで平田勝男(現二軍監督)、藤川球児、久保田智之ら球団を代表する選手が背負ってきた。高野はロッテ時代は58だったが、2019年7月に交換トレードされた相手の石崎剛(現ロッテ)が背負っていた30をそのまま着用している。

たかが背番号、されど背番号。番号によって特色があったり、球団によっては同じ番号でも重みが違うこともある。新型コロナウイルスの影響で開幕が遅れ、当面は無観客試合となるプロ野球。球場に行けない分、背番号に注目するのも楽しみ方のひとつだろう。

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