TikTok、米社CEOが辞任 売却命令受け決断
【シリコンバレー=佐藤浩実】中国北京字節跳動科技(バイトダンス)の傘下で動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」を運営する米国法人のケビン・メイヤー最高経営責任者(CEO)が辞任することが26日わかった。事業停止の瀬戸際にある同社は米マイクロソフトなどへの売却交渉中で、トランプ米政権を提訴したばかり。先行きの不透明感が一段と高まりそうだ。
米国法人ティックトックの広報担当者がメイヤー氏の辞任を認めた。米ウォルト・ディズニーの幹部だったメイヤー氏は6月にティックトックのCEOに転じたが、わずか3カ月で会社を離れる。日本経済新聞が確認したメイヤー氏から従業員へのメモによると、「ここ数週間の政治環境の大きな変化」が辞意を固めた理由だという。
中国を警戒するトランプ政権はティックトックを安全保障上のリスクと位置づけ、米国での事業を制限しようとしてきた。8月6日には米企業などが45日後からティックトックやバイトダンスと取引するのを禁じる大統領令に署名。同14日にはバイトダンスに対し、米国事業を90日以内に売却するよう命じた。
これらの大統領令が出るなかで、メイヤー氏は売却などに伴う「企業構造の変化」が自身が契約した「グローバルでの役割」をどう変えるかを考えるようになったという。そのうえで26日に従業員に対し「会社を去ることを決めた」と伝えた。今後はゼネラルマネジャーのバネッサ・パパス氏が暫定的にCEOの役割を務める。
メイヤー氏の辞任が今後の売却交渉や、トランプ政権に対する訴訟にどう影響するかは不明だ。ただティックトックにとっては、米国人であるメイヤー氏の採用そのものが政権の懸念を拭うための施策だった。
ティックトックは26日、「彼の決断を全面的に尊重する」との声明を出した。