トンガ火山噴火、何が起きたのか、1秒間に100回の雷

大量の雷、衝撃波、津波、年末に始まった噴火

2022.01.18
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2022年1月15日、トンガ王国の海底火山が恐ろしいほどの大噴火を起こした。日本の気象衛星が撮影したこの画像の右手に噴火の様子が確認できる。(PHOTOGRAPH BY JAPAN METEOROLOGY AGENCY VIA AP)
2022年1月15日、トンガ王国の海底火山が恐ろしいほどの大噴火を起こした。日本の気象衛星が撮影したこの画像の右手に噴火の様子が確認できる。(PHOTOGRAPH BY JAPAN METEOROLOGY AGENCY VIA AP)
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 2021年末、南太平洋の島国トンガで、海面から顔を出していたある火山島フンガトンガ・フンガハアパイが噴火を始めた。当初は灰色の噴煙と控えめな爆発が起こる程度のもので、トンガの住民以外に気付く人もほとんどいなかった。

 年明け早々にいったん活動が穏やかになったが、その後一転して激しくなり、高く上がった火山灰の柱は、記録的な量の雷を発生させた。「1分間に5000〜6000回、つまり1秒間に100回の雷が発生するようになったのです。信じがたい量です」。気象測定を行うフィンランドの企業ヴァイサラ社のクリス・バガスキー氏はそう述べている。

 そして1月15日、火山は凄まじい爆発を起こした。大気は吹き飛ばされ、衝撃波となって音速に近い速さで島から放射状に広がった。ソニックブーム(衝撃波に伴う音)は、2000キロ以上離れたニュージーランドでも聞かれ、衝撃波は最終的に地球を半周して1万6000キロも離れた英国にまで到達した。

 人々を震え上がらせたのは、その後すぐに発生した津波だった。津波は火山から数十キロ南、首都ヌクアロファがあるトンガタプ島を襲った。通信は遮断され、街は洪水に見舞われた。規模は小さかったものの、津波は広大な海を越えて北米太平洋岸北西部にも押し寄せた。

 同火山の地史に関する最近の研究によると、今回のような激しい活動は、およそ1000年に一度しか起こらないと考えられている。願わくば、最も激しい噴火はすでに終わったと考えたいところだ。しかし、たとえそうだったとしても、すでに被害は生じている。

 トンガにとって「これは壊滅的な打撃になる可能性があります」と語るのは、米スミソニアン協会の火山学者ジャニーン・クリプナー氏だ。「現時点では、わかっていることよりも疑問の方がはるかに多い状態です」。それでも、地殻変動や地質学的な要因と、それが今後の火山にどのような影響を及ぼすかについて、科学者たちが知っていることを以下に紹介する。(参考記事:「史上最大の噴火は世界をこれだけ変えた」

強力な火山が集まる場所

 フンガトンガ・フンガハアパイは、南太平洋の火山密集エリアに位置している。周辺の火山は、波の上に顔を出しているものも、海底にあるものも含めて、激しい噴火を起こしやすい傾向にある。過去には、噴出物が都市ほどの大きさに広がったり、火山がそれ自体を吹き飛ばしてすぐに新しい島が形成されたりといった事例もあった。

 これほど多くの火山がひしめいているのは、太平洋プレートがオーストラリアのプレートの下に継続的に潜り込んでいるためだ。プレートがマントルの超高温の岩石の中に潜っていくと、プレート内部にあった水分が分離する。その水分の働きによってマントルが溶けることで、ガスを含んだマグマが大量に生成されて、爆発的な噴火を起こす条件が整う。

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