レゴブロックがほぼ絶対零度の環境で優れた断熱材として機能すると判明、実験装置や量子コンピューターへの応用も

ブロックをくっつけてさまざまなものを作ることができるLEGO(レゴ)ブロックは、世界中の人々に愛されているロングセラーのブロック玩具です。そんなレゴブロックがほぼ絶対零度の環境で優れた断熱材として機能することをイギリス・ランカスター大学の研究チームが発見し、特殊な実験装置や量子コンピューターの構築に応用できるかもしれないと主張しています。

LEGO® Block Structures as a Sub-Kelvin Thermal Insulator | Scientific Reports
https://www.nature.com/articles/s41598-019-55616-7

The universe’s coldest LEGO could help scientists built quantum computers | Inverse
https://www.inverse.com/article/61962-cold-quantum-lego

実際に研究チームがレゴブロックをほぼ絶対零度に近い超低温まで冷却した実験の様子は、以下のムービーで見ることができます。

The Coolest LEGO ® in the Universe – 2,000 Times Colder Than Deep Space - YouTube


研究チームのJoshua Chawner氏と研究チームを率いる物理学者のDmitry Zmeev氏の背後にある装置は、ヘリウムの混合溶液を希釈した際の希釈熱を利用して低温状態を作り出す希釈冷凍器です。

希釈冷凍機の内部温度は、なんとわずか0.004ケルビン(K)。ほぼ絶対零度といっていい温度となっています。

研究チームはこの超低温環境において、ABS樹脂製のレゴブロックがどのように振る舞うのかを実験するため、実際に希釈冷凍器の中にレゴブロックを投入したとのこと。「これは世界で最も冷やされたレゴです」と、Zmeev氏が笑いながら話しました。

レゴブロックを冷やし終わった希釈冷凍器を、研究チームが手分けして取り外します。

内部の冷却部を開くと、赤い人型のレゴブロックが登場。

その脇には、4段に重ねられたレゴブロックが、元の姿のまま置かれていました。

絶対零度近くまで冷やされていたにもかかわらず、レゴブロックは無事生還を果たしたとChawner氏は述べています。

また、研究チームは4段に重ねたレゴの上下に銅板を貼りつけて、レゴブロックがほぼ絶対零度の環境でどれほどの断熱効果を発揮するのかも測定していました。

その結果、レゴブロックは超低温環境において、非常に優れた断熱材として機能することが判明しました。レゴブロックの断熱性能は、超低温環境で一般的に断熱材として使われるガラスセラミック材料のMacorよりも優れていたそうです。研究チームはレゴブロックが優れた熱伝導効率を発揮する理由が、レゴブロックが互いに結合するための形状や配置にあるかもしれないと考えています。

レゴブロックは入手が簡単かつ安価であり、数多くのブロックを組み合わせて実験装置を複製することも可能であるため、今回の結果は刺激的だと研究チームは考えています。また、研究チームはレゴブロックの材料であるABS樹脂を使った3Dプリントで作った部品で、今回の結果を基にしてより高機能な断熱材を作る試みも行っているとのこと。

研究チームは、今回の実験結果が希釈冷凍器のような科学機器の設計や、量子コンピューターのハードウェア開発に役立つ可能性があると指摘。量子コンピューターは理論的に優れた計算能力を達成できることで知られていますが、量子コンピューターのチップに使う超伝導素材を絶対零度に近い極低温に保つ必要があるため、超低温下で機能する断熱材は非常に重要な部品となるそうです。