誘拐犯からの手紙、何の切り抜きで作ると一番怖くないのか




 

皆さんは、このような新聞紙の切り抜きで作った手紙に見覚えはあるだろうか。

 

テレビドラマでよく見られる、誘拐犯が誘拐した子供の家族や警察に送る脅迫状である。

PCやスマホでいくらでも文章を作成し印刷ができる現代において廃れゆく方法であるものの、怪文書らしさは言わずもがなだ。

 

1997年以降、新聞の発行部数は減少の一途をたどった。日本新聞協会のデータによれば、直近10年でおよそ25%ほどの部数減が見られている。

 

さらに熱心な新聞購読者は高齢層に集中し、誘拐するようなアグレッシブな人間とは距離の遠い読み物になってしまった。

 

そんな新聞の退潮に伴い、脅迫状の見た目も変わってくるものと予想される。

怪文書も多様化する時代。切り抜くための紙面は、新聞紙以外にも多く存在する。

 

 

もしも犯人が、新聞紙以外の紙面の切り抜きで脅迫状を作ってきたらどうだろう。

 

ドラマや映画で見たものと毛色の違う脅迫状が届いたとき、我々は適切な対応ができるだろうか。

我々は届いた怪文書が脅迫状であることを冷静に知覚できなければならない。そのためには、他の雑誌を切り抜いて作られた脅迫状の例を、そしてその中でも恐怖感の薄いものの例を、認識しておく必要がある。

 

というわけで今回は、様々な雑誌で脅迫状を作成し、一番怖くないものは何かを検証する運びとなった。

本記事が有用になる場面が来ないことを祈るばかりだが、万が一の場合の心構えに、少しでも与することができれば幸いだ。

 

検証開始

今回誘拐犯からの手紙の切り抜きに使用する雑誌として、以下の5つを選定した。

 

an・an

ゼクシィ

週刊少年ジャンプ

実話ナックルズ

エロ漫画「恋愛チェリーピンク」

 

そして今回作成する手紙の文章として、以下の雛形を利用する。

 

お前の娘はあずかった

返してほしければ

身代金3千万円を持って

大久保公園まで一人でこい

 

誘拐の入門編のような内容である。

それでは早速この5種類の雑誌の切り抜きで、誘拐犯からの手紙を作ってみよう。

 

①an・an

an・anとは、マガジンハウスが毎週発行している女性向け週刊誌で、1970年から発売されている老舗雑誌である。

 

書店のみならずコンビニなどにも置いてあるため、脅迫状を作るのに急いでいる犯人なら軽くパッと手に取って購入する可能性もある。

そんな『an・an』の切り抜きで作成した誘拐犯の手紙が、こちらだ。

 

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脅迫状にセンスが出た。

落ち着いたトーンの中にもアクセントの差し色が映えており、女性でも手に取りやすいおしゃれな脅迫状に仕上がっている。

 

切り抜いた雑誌の都合上だが、「息子」の箇所が差し色のイエローで目立っている。

マーカーのようなハイライト効果が出ており、重要な単語に自然と目がいく読者に優しい設計だ。

 

さらに最も重要な「3千万円」が、ここでは

「San千Man円」と表現されている。

 

切り抜ける文字が見つからなかったためだと予想するが、見慣れたan・anのロゴを利用することで、読者の安心感を誘う狙いもあるだろう。

 

ただし、最後の「こい」に関しては、いかんせん古畑チックなサスペンス風味が出てしまっている。

利用した紙面の都合上ではあるが、これは事件性が匂ってしまって良くない。安心感を下げるマイナスポイントである。

 

まとめると、以下のようになった。

 

どれも恐怖感の薄さを表す指標であり、

今回は 17/25 点といったところ。

 

脅迫状らしくなさとしてはまずまずのスタートを切った。この機会に学ぶ意義のある事例といえよう。

 

それでは次を見てみよう。

 

②ゼクシィ

リクルートが毎月発行している結婚情報誌である。

結婚式場やドレス情報、先輩カップルの体験談などが載っており、結婚の予定がある人にもない人にも人気の雑誌だ。

 

購入したことがない人でも、テレビCMの「プロポーズされたら、ゼクシィ」というキャッチフレーズは聞き覚えがあるだろう。

そんな『ゼクシィ』で作った誘拐犯の手紙がこちらだ。

 

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なんだか幸せそうだ。

 

an・anと比べても、よりカラフルでポップな脅迫状へと仕上がった。

ワクワクするような色使いやフォントも多く、3000万円という数値も、パートナーとの素敵な将来のための、ポジティブな金額に見えてくる。

 

今回特筆すべき点は、誘拐したのが「花嫁」というところ。

妻でも婚約者でもなく、花嫁と表現する点が多幸感のあるニュアンスを孕んでおり、いざ大久保公園に着いても何か素敵な催しが待っているのではと期待させる。

 

紙面の都合上だが、「ほシィければ」の部分で『ゼクシィ』のフォントが引用されている点も見逃せない。

先述の花嫁のくだりと続けて目に入ることで、ゼクシィを購入するときの満ち足りた心情をサブリミナル的に想起させるのだ。

 

というわけで、恐怖感の薄さとしては 20/25 点と2つ目にしてかなりの高得点をマークした。

一点惜しむらくは、結婚という大きなライフイベントを見据えさせてしまうため、手に取りやすさはそこまで高くないところ。

 

「私にはこの脅迫状、ちょっと早いかも…」と、尻込みしてしまう女性もいるだろう。

 

続いてはこちらだ。

 

③少年ジャンプ

子供から大人まで、多くの人に長年愛されている漫画雑誌である。

集英社が発行しており、ドラゴンボールやONE PIECEなど数々のヒット作を生み出してきた。

 

そんな『週刊少年ジャンプ』の切り抜きで作った脅迫状がこちらである。

 

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少年ジャンプに引けを取らない、アツい脅迫状になった。

 

また、漫画雑誌で使用されている紙の性質上、本来の新聞紙と近い印象があり、予想に反して威圧感がこもってしまった。

 

特に黒背景・白ふちの袋文字は、相当な不気味さを伴うことが判明した。字体に関しても、本来は漫画的な表現の幅を持たせる文字たちが、脅迫状の中では緊迫感を存分に発揮している。

一方で、少年漫画ゆえに一部の漢字には丁寧に振り仮名がふられている。そのため子供でも内容を理解できる脅迫状に仕上がっており、幅広い世代に広く親しまれるであろう一枚になった。

 

紙面の都合上ではあるが、少年漫画らしく熱い、ヒキのある締め方となっている。

きっと大久保公園で決戦の火蓋が切って落とされるのだ。キッズたちが来週の脅迫状を楽しみに待つ様子がうかがえる。

 

というわけで、恐怖感の薄さとしては 19/25 点と、非常に心踊る脅迫状が出来上がった。

ただしその代償として、大久保公園で主人公を待ち受ける試練のハードルは上がり、要求を必要以上に大きく感じさせてしまう結果となった。

 

手に取りやすさに関しても、結局は少年ジャンプであるがゆえに、娘を持つ親世代の感触としてはまずまずの結果に落ち着いている。

 

続いてはこちらだ。

 

④実話ナックルズ

太陽図書が発行している実話誌である。

芸能人の衝撃ニュースや裏社会にサブカルチャーなど、雑誌でのみ取り扱えるアウトローな内容の数々が取り上げられている。

 

そんな『実話ナックルズ』の切り抜きで作った誘拐犯からの手紙がこちらだ。

 

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一番脅迫状らしい外面となった。

 

「あずかった」の部分がナックルズからの引用になってしまっているが、これにより誘拐犯が複数いる印象を与え、本件がかなり手強いヤマになると感じさせる。

 

文字色もモノクロをベースに赤が混ざるという、世の脅迫状の中で一番怖い色使いになっている。

 

金額も他に比べサラりと上がっており、身代金ですらボッタくる繁華街の怖さもにじみ出ている。

「歌舞伎町」が取引場所になっているのも、カタギじゃない空気をひしひしと感じさせる。あと少し歩いたら、大久保公園に着くというのに。

 

というわけで、恐怖感が薄まるわけはなく、 11/25 点とこれまでで最低得点をマークした。

逆に言えばすぐに脅迫状であることが分かるため、見た目の凶悪さに焦らず冷静に対応して欲しい。まずは本当に実話かどうか確かめることから始めよう。

 

最後はこちらだ。

 

⑤エロ漫画「恋愛チェリーピンク」

エロ漫画に関しては秋田書店の発行している『恋愛チェリーピンク』を使用する。

誘拐犯が自室にあるもので脅迫状を作ろうとした際に、確かに本棚にありそうだ。これまでの雑誌とは違い、エロ漫画ともなると内容に偏りがありそうだが、果たしてどう仕上がるのか。

 

エロ漫画『恋愛チェリーピンク』の切り抜きで作った誘拐犯からの手紙がこちらだ。

 

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余罪はたっぷりだろう。

もうこの脅迫状を受け取った時点で、現代社会が産んだとんでもないモンスターの存在を認識できる。

 

「娘はあずかった」の意味合いが大きく変わってくる最悪の事例だ。

 

「身代金玉3千マン」も要求物として恐怖しかない。何をトランクケースに入れればいいか分からない

なぜか分からないけど、通常の3千万円だと許してもらえなさそうな気がする。

 

向こうが来てくれることになった。

3000万円を持った犯人が、大久保公園にビクビクしながら現れるらしい。

 

もはや点数に意味はないと考える。脅迫状より脅迫状な一枚が完成してしまった。

無事に事件が解決した暁には、この文書はお焚き上げをすることをお勧めする。

 

 

というわけで、5つの雑誌を検証した結果、一番怖くないのは『ゼクシィ』で作った脅迫状に決定した。

 

総括

今回は5つの雑誌で誘拐犯からの手紙を作ったが、どんな脅迫状が来ても冷静に対処できる心構えは身についただろうか。

有事の際の対策として、非常に意義深い検証だったと言えるだろう。

 

どのような脅迫状や怪文書が届いても、その雰囲気に飲まれる必要はない。

我々は決して焦らず、毅然と対応しなくてはいけないのだ。

 

それが例え、今回最高得点を叩き出したゼクシィであっても、論外だったセクシィなやつであっても、だ。