トラベル業界の回復はいつ?ーーホテル事業は苦境続き、2023年まで復活見込めず【Cowen調査】

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ピックアップTRAVEL UPDATE: MORE RECOVERY DATA POINTS; VACATION RENTAL SURGE CONTINUES

ニュースサマリー:投資銀行のCowenは8日、COVID-19パンデミック以降におけるトラベル市場推移に関するレポートを公開した。同資料によれば、Expedia傘下のバケーションレンタル「Vrbo」の検索ボリュームはYoYで昨年を上回る数値を記録したことを報告し、市場が好調な兆しをみせているとしている。

話題のポイント:夏の訪れが、バケーションレンタルを救うのでしょうか。Cowenが発表した資料では、バケーションレンタルプラットフォーマーの回復傾向が示されており、AirbnbもYoY検索ボリュームでみれば10%減ほどに抑えられているとしています。

先月Vrboを子会社に持つExpediaは、Q1決算報告書にてバケーションレンタルの大幅な失速が減損損失に大きく影響したと指摘していました。しかし、上述したようにVrboは収益とは直接関係ない検索ボリュームとはいえ、YoYで成長増を示しておりCOVID-19以降においてもバケーションレンタルの需要は変わらず安定成長の兆しがみえはじめています。

また、Bloombergによれば5月17日から6月3日の期間において、Airbnbの宿泊予約件数がYoY比較で上回ったことを明らかにしています。同社CEOのBrian Chesky氏も「StayHomeが長かった分、その反動がはっきり見え始めている」と述べており、夏の休暇も重なることで「近場」かつ、家族など少数のプライベートで時間を過ごせるバケーションレンタルに焦点が集まった形のようです。

しかし、ブランドホテルやExpediaなどのOTAはYoY検索ボリューム比が依然と60%減となっており、需要の回復はまだまだ先のようです。

同資料では、2020年におけるホテル売上高がYoY比でマイナス56%に落ち着くだろうと予想しており、徐々に回復傾向へ向かうものの2019年度のホテル売上高(部屋代のみ)への回帰には3年ほどかかると予想しています。

ホスピタリティー業界のデータ解析を行うSTRによれば、米国におけるホテル部屋稼働率はメモリアルデーが重なった5月下旬には35.4%を記録し、4月度の平均稼働率21%と比較すれば徐々に回復していることが分かります。とはいえ、彼らの中心顧客であったビジネストラベラーや団体旅行客が見込めない現状では、先行きは不透明と言わざるを得ません。

またポストCOVID-19の世界において、移動を最小限にしてローカルの魅力を探る「マイクロツアリズム」に注目が集まりつつあります。日本でいえば、個人経営の旅館などストーリー性の伴う宿泊施設はこの文脈に最適です。そうした意味でもやはり、上述したようなランダムな大衆を顧客としてきたチェーンベースのホテルは利用する意味が見いだせず、苦境に立たされる可能性は大です。

Expedia等のOTAはいくらでも市場に合わせ、その事業エコシステムを変化させられるのでしょう。しかし、不動産を抱えるホテルにとっては、ポストCOVID-19での新しい専属顧客を探る必要が出てきます。そのため、Cowenの予想に反して最速で回復の出口へ向かうには、「マイクロツアリズム」のような新しいアイデアが求められそうです。

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