ソフトウェア

Googleが「樹木を植えた方がいい場所」をマッピングして植樹計画をサポートするツールを開発


地球温暖化が進むことにより、特にヒートアイランド現象の影響を受ける都市部では、多くの人が健康を崩したり熱中症になったりする可能性があります。そんな都市部の熱波を緩和するために重要なのが、街路樹や公園に植えられた木々です。Googleは都市設計者が植樹を効率的に行うことをサポートするため、樹木を植えた方がいい場所を自動で識別できるツール「Tree Canopy Lab」をリリースしました。

Creating new tree shade with the power of AI and aerial imagery
https://blog.google/products/earth/helping-cities-seed-new-trees-with-tree-canopy-lab/

Rachel Malarich is planting a better future, tree by tree
https://blog.google/products/earth/rachel-malarich-planting-better-future/

Google launches new tool to help cities stay cool - The Verge
https://www.theverge.com/2020/11/18/21573081/google-new-tool-hot-cities-trees-climate-change-temperature


都市部ではコンクリートで舗装された道や建物の増加によって熱が閉じ込められ、郊外地域よりも気温が高くなる傾向があります。これにより、緑が少ない都市部では郊外より熱波による熱中症のリスクが高まるため、地球温暖化による影響を緩和することは公衆衛生の観点からも重要です。

街路樹や公園の樹木は屋外にいる人や建物を直射日光から守り、水分が蒸散する時に熱を放射して温度を下げるため、大都市圏の気温を下げる役に立ちます。アメリカ合衆国環境保護庁は、都市部の木々が夏の最高気温を最大で5度下げることができると述べています。


多くの政策立案者や都市部住民は植樹の重要性を理解していますが、「一体どこに樹木を植えるべきなのか?」を現地まで出向いて調査するには多額のコストがかかります。そこでGoogleは、航空写真とAIを組み合わせることで都市部の樹木を検出し、樹木を植えた方がいい場所を明らかにするツール「Tree Canopy Lab」を開発しました。

従来の手法では、都市の各ブロックにおける樹木の状況を知るために人員を現地まで派遣し、マッピングする必要がありました。ところがTree Canopy Labを使えば、春・夏・秋に撮影された航空写真を基にして都市を覆う樹冠をGoogleのAIが識別し、都市のさまざまな場所にどれほどの木々が存在するのかを自動で知ることができます。さらに、建物の密集具合などから高温に対してより弱い場所を示す追加データと組み合わせ、インタラクティブなマップを構築することも可能だとのこと。


実際にGoogleはTree Canopy Labをロサンゼルス市で試験運用し、都市部における樹木の配置や熱波によるリスクが高い場所を調査しました。その結果、ロサンゼルス市に住む住民の半数以上が「近隣地域に占める樹木被覆率が10%未満」の場所に住んでいることが判明。これは都市部の平均を10%以上も下回っているそうです。また、44%のロサンゼルス住民が、熱波のリスクが極度に高い地域に住んでいるとGoogleは述べています。

都市を覆う樹冠の割合でロサンゼルスの各地域を色分けした図がこれ。緑色が濃いほど樹木被覆率が高いことを表しています。


このうち、樹冠の割合が10%を下回る地域はこれくらいだそうです。


Tree Canopy Labでは、さらに詳細に樹木の位置をチェックすることもできます。


ロサンゼルス市は、「2021年末までに9万本の植樹を行い、その後も年間2万本の植樹を続ける」という目標を掲げています。植樹は単に空いたスペースを見つけて適当に行われるのではなく、近隣地域を美化し、大気の質を改善し、街路温度を下げるための日陰を作り、社会的・経済的・環境的な平等を達成することが重要だとのこと。

AIと航空写真を活用したTree Canopy Labのアプローチは、植樹をより効果的な地域に行う上で役に立ちます。ロサンゼルス市の場合、樹冠が少ない地域は市のサービスが十分に行き届いていない地域と重なる傾向が強かったそうで、こうした地域に投資を行うことはコミュニティの強化にもつながる可能性があります。

ロサンゼルス市の都市森林担当者であるレイチェル・マラリッチ氏は、「Tree Canopy Labのデータは私たちの想定を超えて、実際の植林ニーズがどこにあるのかを確認するのに役立ちます」「私は他の人と協力して大きな影響を生み出し、将来の環境を向上する可能性に向けて取り組むことに興奮しています」と述べました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
都会の樹木は田舎の樹木よりも成長が早いが死ぬのも早いことが明らかに - GIGAZINE

地球温暖化は熱帯地域にある都市に大きな経済的ダメージを与える - GIGAZINE

気候変動が人間社会に与える9つの悪影響 - GIGAZINE

機械学習によって衛星写真からソーラーパネルの位置と規模を正確に特定する「DeepSolar」 - GIGAZINE

Googleが翌日の風力発電量を機械学習で予測して効率的な電力供給を行うシステムを開発 - GIGAZINE

Googleの危機対策チームはAIで洪水を予測するシステムを開発している - GIGAZINE

in ソフトウェア, Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article here.