ポストTwitterの「Post.」をGoogle関連企業の元CEOが立ち上げた背景と勝算(Google Tales)

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佐藤由紀子

IT系海外速報を書いたり、翻訳を請け負ったりしています。初めてのスマートフォンはHTC Desire。その後はNexus 5からずっとGoogleさんオリジナルモデルを使っています。

特集

ポストTwitterの「Post.」をGoogle関連企業の元CEOが立ち上げた背景と勝算(Google Tales)
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この不定期連載、うっかりしばらくお休みしてしまいました。Twitterを買収したイーロン・マスクさん(今はCEO)が毎日Twitterについてツイートするのが面白くて関連記事ばかり書いていたもので。

Twitter、大量解雇のわりに、表面的にはまだその影響があまり見えません。ワールドカップの試合中も(ちょっと遅くなった感じはありましたが)持ちこたえています。少なくとも昔はよく出ていた空飛ぶクジラ(ダウンしている間に表示されていた画像)のようなものは、今のところ出てきていません。

▲なつかしのクジラ

それでも、言うことがころころ変わるマスクCEOのやり方に不信感を持つユーザーがTwitter以外の居場所を探し始めていることは「Twitter終了」がTwitterのトレンドになったり、マストドン(Mastodon)のユーザー数が急増していたりすることからも分かります。

「ポスト(post-)Twitter」の有力候補はMastodonのようですが、11月14日に招待制ベータ版で始まった「Post.news」(以下、「Post.」)も面白そうです。

元Googlerが立ち上げたSNSということで、Google関連の話をするはずのこの連載で紹介しましょう

ソーシャルナビアプリ「Waze」の元CEOが始めたPost.news

Post.のトップページはこんな感じで、いかにもまだベータです。

▲Post.のトップページ

でも、カーラ・スウィッシャーさんやウォルト・モスバーグさんなどのテックメディアのレジェンドが推しています。いつも辛口で、最近のマスクさんについて「この25年間で一番がっかりした人」とツイートしたスウィッシャーさんはPost.の立ち上げについては「(創業者の)@noamはずっと尊敬している偉大な起業家で、(彼が以前運営していた)@wazeは交通に特化したソーシャルメディアだ。それに、彼はジャーナリズムを尊重し、多様な意見を楽しく賢い方法で発信する必要性も尊重している」と大絶賛。

Post.のウェイティングリストへの登録は告知から数日で数千人になり、25日に私が行列に並んだときには20万人を超えていて、これを書いている今は、行列が31万人、参加済みユーザーは5万9000人という発表。私も入れてもらいました。

▲入れてもらいました

このサービスを立ち上げたのは、Googleが2013年にWazeを買収したときのWazeのCEO、ノーム・バーディンさん。Wazeは、「スマートフォン向けのナビゲーションアプリ」と紹介されますが、最大の特徴はユーザーのコミュニティが情報を共有するところ。「ソーシャル」ナビゲーションアプリなどとも呼ばれます。

ドライバーのみんながリアルな交通情報を受発信することで成り立つサービスなので、当然コミュニティを健全に保つ必要があります。バーディンさんは2021年にGoogle傘下のWazeのCEOを辞めるまでの約12年間、ずっとそういうソーシャルアプリを運営してきたわけです。

バーディンさん、2021年2月にWazeを辞めた後の1年4カ月、じっくり「次にやること」を考えていました。そして、Post.を立ち上げたのです。タイミング的に「ポストTwitter」みたいに思われがちですが、Twitterの買収騒動が始まる前から構想していたようです。

▲Post.を創業したバーディンさん(昨年の感謝祭のツイートより)

Post.が目指すのは未来の新聞?

Post.では、参加者(Poster)が自由に投稿し、投稿に「いいね」やコメントを付け、気に入った相手をフォローする──今のところ、Twitterとだいたい同じですね。文字数制限はないようです(まだちゃんとしたヘルプもない)。

▲Post.の投稿例

でも、バーディンさんの立ち上げの辞によると、ニュースとソーシャルメディアの中間を目指しているそうです。「未来の新聞はフィードだと信じて」いると。今できることはTwitterとほとんど同じ(でまだβなので、できないこともたくさんあります)ですが、将来的にはThe New York Timesのような有料メディアの記事をPost.上で(サブスクではなく)1本ずつ購入して読めるようにしたいとバーディンさんは言ってます。

サインアップすると自動的に投げ銭用に50ポイントくれて、気に入ったポストに投げ銭できます。そのうちポイントを買って投げ銭するようになるみたいです。メディアの記事にもこの投げ銭を使うんじゃないかと思います。

▲ポイントは投げ銭にも使える

まだどういうビジネスモデルを考えているのかはっきりした説明はないですが、少なくとも広告ベースにはしないそうです。広告ベースにすると、注目を集めようとしなければならなくなるから。決して嫌がらせや偽情報がまん延すると広告主が逃げるから、ではありません。

ちなみに最初の資金調達先はAndreessen Horowitz(A16Z)と、ニューヨーク大学教授で自分も起業家のスコット・ギャロウェイさん。ギャロウェイさんはお金だけじゃなくビジネスのアドバイスもがんがんしているようです。

Post.の課題

当面の大きな課題は、Twitterエクソダスの原因の1つでもある、プラットフォーム上の嫌がらせやなりすましをどう防ぐかです。いろんな機能を追加する前に、まずはモデレーションツール、人材採用、フラグ付けやブロック、ミュート、モデレーションキーワードの調整などに取り組んでいます。それがある程度整わないと、参加人数は増やせません。

ウェイティングリストに登録する際に結構ちゃんとした自己紹介も必要なので、今のところ参加者は何らかの基準で選んでいるようです。それもあってなのか、攻撃的な投稿や嫌がらせはまだないようです。

まだろくに検索もできず、ハッシュタグも効いてるんだかなんだか分からないし、既読ポイントから再開、すらできませんが、「こんな機能が欲しい」という要望はあっても不平不満はほとんど見えません。誰かが不満を言うと、他の誰かが「まだベータなんだから暖かく見守ろうよ」とさとします。

「Post.をみんなで居心地のいいSNSに育てていこうぜ」という雰囲気になっていて、穏やかで爽やかです。

今日のバーディンさんの投稿によると、「なりすましや金融詐欺など、恐れていた行為が見られ始めている」が、それにフラグを立ててくれるユーザーに助けられているそうです。

30万人も参加を待たせているのはなぜか、という質問に対し、バーディンさんは、目標は1年で5000万DAU(日間アクティブユーザー数)をサポートできるようになることだが、そのためには少数のユーザーでいろんな機能を試しておきたいと答えました。

こうした説明の投稿も含め、バーディンさんがこまめに投稿することで、うまく雰囲気を作っています。

そうそう、まだモバイルアプリ(iOSとAndroid)もありませんが、PWA(Progressive Web Apps)はあります。PWAにうまく機能を盛り込めるようになれば、AppleやGoogleに手数料を払わなくちゃならないアプリは不要です。アプリ内決済が必要なビジネスモデルになりそうなので、そっちの方向を目指すのかもしれません。

▲Post.のPWAをホーム画面に置きました

Twitterが終了になるとしたら、従業員不足よりも広告主の減少よりも、無法地帯になることを恐れるAppleとGoogleが公式アプリストアからTwitterアプリを削除することだ、とも言われています。

Googleが推すPWAへの注目度が高くなってきている、という点もGoogle特別対策室としては付け加えておきましょう。

Post.登録申込(待ち行列に並ぶ方法)

Post.への登録申込には、まず「post.news」にアクセスし、右上のSign Upをクリックします。

すると、ウェイトリスト入りするためのボタンが出てきます。

次に、メールアドレス、姓名、プロフィールを入れます。

すると、あなたは何番目の登録者であると表示され、メールが届きます。

あとは枠が増えるのを待ちましょう。

追記:連載名を「Google Tales」に変更しました。

《佐藤由紀子》
佐藤由紀子

IT系海外速報を書いたり、翻訳を請け負ったりしています。初めてのスマートフォンはHTC Desire。その後はNexus 5からずっとGoogleさんオリジナルモデルを使っています。

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