GA4の計測設計には設計ドキュメントが重要な件

GA4はGA4のUIやGTMなど色々な箇所からイベント計測できるため、計測設計内容を書き残したドキュメントが必要です。この記事ではJADEでのGA4計測設計ドキュメント化の話を紹介します。

GA4の計測設計には設計ドキュメントが重要な件

こんにちは、あるいはこんばんは。村山です。皆さまGoogleアナリティクス4(以下、GA4)との戯れには慣れてきましたでしょうか。GA4の使い方は「完全に理解した」という方もいれば「まだまだこれから計測実装していくから触っていない」みたいな方もいらっしゃるのではないかと思います。

今回は、後者である「これからGA4を計測実装していく」方にむけて、どのようにGA4の計測実装を推進したら良いのか書いていこうと思います。

 

 

どのようなイベントを計測するべきか?

GA4の計測実装を考えている方とお話するとよく出る話題として「これは計測した方が良いイベントありますか?」や「オススメの計測ありますか?」などです。しかし、そんな便利なイベント計測やオススメの計測等ありません。

なぜかというと、Webサイトやビジネスによって計測しておきたいイベントは異なるためです。ECサイト、メディアサイトなど、ある程度のジャンルまで絞り込むことで、計測すべきイベントは絞り込むことは可能かもしれません。しかし、同じメディアサイトでもデータを扱う人が何のためにそのデータを使うのか?によって、適切なデータのあり方は異なるべきと考えています。そのため、「どのようなデータが必要だから、どのようなイベントを計測しておくべきか」を最初に要件定義しておくことがオススメです。

ただ、データに関わる方の人数によっても定義の仕方、そのアプローチは異なるように思います。

 

データに関わる方が1名と少ない場合

GA4を見る人が1人なのであれば、自由にイベント名の命名規則や計測仕様を考えることができます。GA4のヘルプページを参照しながら、どのようなイベント名で計測していくかを決めていきましょう。ただし、計測対象のWebサイトを保有するのが企業の場合、後任の方が理解できるようなイベント名であるとベターです。

人間の記憶は不確かなものです。3ヶ月前に設定したイベントであれば設定内容を正確に把握しているかもしれませんが、12ヶ月前に設定したイベントの設定内容も覚えておくことができるでしょうか?自信がないのであれば、人間の記憶に頼らずに外部の記憶装置に記録していくのが良いと思っています。

私は12ヶ月前に設定したイベントの設定内容はおろか、3ヶ月前に設定したイベントの設定内容すら忘れかけています。なので自身の記憶には頼ることができません。

 

データに関わる方が2名以上の場合

GA4を見る人がチームなど複数人の場合、関係者が好き勝手にイベント計測していくとデータがカオスとなり最終的に破綻しがちです。計測したい人が自由にイベント名を作成していった結果、第三者がデータを見ても、どのような意図で計測されたイベントなのか理解できないといった状態となってしまいます。

そのため、GA4のデータ関係者で集まり「どのようなデータを計測するべきか」を要件定義しておきましょう。作成した要件定義に沿って、イベント計測を実装していきましょう。

ここでのミソは関係者内での計測要件の同意です。それぞれが別の方向を向いていては前への推進力は落ちてしまいます。

 

 

データ計測の設計書となるドキュメントが必要だ

GA4のデータに関わる方が1名の場合では後任むけに(あるいは自身だけのために)、複数人の場合ではチームとしてデータを活用していくために、「誰の何のためのデータなのか」を記録してあるドキュメントを残しておくことが望ましいです。

ユニバーサルアナリティクスの時もそれは変わりませんが、GA4においてはドキュメントの必要性が非常に増したように思います。

 

GA4はさまざまなイベント計測方法がある

なぜ、GA4ではデータ計測の設計書となるドキュメントの必要性が増したのでしょうか?それは、GA4がさまざまな箇所から計測するイベントを作成できるためです。

「誰の何のためのデータ」なのかだけでも複数人いると意思統一が難しいのに、さまざまな箇所からイベント計測できることで「誰が何のためのデータをどこで生成したのか」とカオスへの道のりが近づく変数が増えてしまうのです。

「どこでイベント計測を生成したのか」は、パケットキャプチャしても把握することはできません。GA4の管理画面、HTML、Googleタグマネージャー(以下、GTM)など、イベント計測が生成されそうな箇所を目検で確認していくしかないのです。HTMLにイベント計測するためのトラッキングコードを設置するのは稀、かつHTMLを見ればわかるので、その他のイベント計測生成方法をおさらいしておきましょう。

 

GA4管理画面内の「イベントの変更」

サイトまたはアプリのコードを変更することなく、既存のイベントに基づいて既存のイベントを変更することが可能です。

[GA4] 管理画面でのイベントの変更と作成 - アナリティクス ヘルプ

GA4管理画面内の「イベントの変更」

(私は変更できる既存のイベント数は最大50件という制限を知らずにイベントを変更しまくった結果、やらかしました)

GA4管理画面内の「イベントの作成」

サイトまたはアプリのコードを変更することなく、既存のイベントに基づいて既存のイベントを新規作成することが可能です。

[GA4] 管理画面でのイベントの変更と作成 - アナリティクス ヘルプ

GA4管理画面内の「イベントの作成」

(イベントの変更もあわせて正規表現を使えないのはもどかしさしかありません)

 

GA4管理画面内の「オーディエンストリガーイベント」

設定したユーザーのオーディエンス定義と合致した場合、そのオーディエンスとしてメンバーへ追加された際にイベントとして計測されます。

[GA4] オーディエンス トリガー - アナリティクス ヘルプ 

GA4管理画面内の「オーディエンストリガーイベント」

(オーディエンストリガーイベントを基に新たなオーディエンストリガーイベントを作れないので気をつけなされよ)

 

GTM内からイベントタグの発火

GTMから自動イベントと拡張計測機能イベント以外のカスタムイベントを計測することができます。

Google アナリティクス 4 タグ - タグ マネージャー ヘルプ

GTM内からイベントタグの発火

(みんな gtag.js なんて使わないで、素直にGTMを使おうぜ)

 

GA4の計測設計にはNotionが便利

JADEではお客さまのGA4を含め、計測設計のドキュメント化に Notion を選択しています。

 

GA4を含め、計測設計のドキュメント化にNotionを選択

 

前述までのように、GA4はさまざまな箇所からイベント計測できることを理解いただけたかと思います。「誰が何のためのデータをどこで生成したのか」がカオスとならないように、GA4での計測設計をドキュメントに残しておくことが最適で、計測設計をドキュメントとして残すのにNotionが最適と考えています。

 

なぜ、Notionなのか?

Notionではデータベースを利用することで多次元的なドキュメントの管理が可能となるためです。

 

GA4の計測実装内容をNotionでドキュメント化した例

 

計測設計を書き残すドキュメントとしてよく利用されるプロダクトとしてGoogleスプレッドシートやExcelなどの表形式のドキュメント化があげられます。

GoogleスプレッドシートやExcelでもGA4の計測設計をドキュメント化することは可能です。1つのレコードごとにイベント名、生成箇所や計測理由などを書き残すことはできます。しかし、表現方法が二次元的を脱しないという制約があるように思います。

 

一方で、Notionではデータベース形式を中心に柔軟なドキュメント化を実現することが可能です。GA4ではネスト化されているデータ構造もあるように、GoogleスプレッドシートやExcelの1セル内に別のシートが存在するようなデータ形式も存在します。そのようなデータに対しても、Notionだと柔軟に対応できるといったメリットがあり、GA4の計測設計のドキュメントとして相性が良い部分と思います。

 

例えば、下記のようにNotionのデータベースでは各レコード内に新たなページを作成することができます。

 

Notionのデータベースはレコード内に新たなページを作成できて便利

 

GTMにて、どのようなトリガー、変数で設定したイベントなのかをドキュメント化することができて便利なのです。

 

2022年夏にJADEのサイトはリニューアルしました。多くのWebサイトをリニューアルする時、基本的にはGA4の計測設定の変更が必須となります。URL、id等が変更されるケースが多いためです。そして、その作業は設定したイベントの内容に応じて重くなりがちです。それは、JADEサイトのリニューアルも例外ではありませんでした。

 

そのため、下記のようにNotionでドキュメント化しリニューアル時のGA4計測設定を私1人だけではなく、メンバーみんなで分担し、GA4で計測実装しているイベントの内容をチェックし、必要であれば再設定していきました。

 

Notionでドキュメント化しリニューアル時のGA4計測設定

 

GA4計測実装の見直しを手伝っていただいた皆さまにとても感謝です!

ケースによってはFigJamも使う

柔軟なNotionでも対応できないケースもあります。例えば、GTM内でタグAを発火させ、そのタグAの内容を参照して別のタグB内で利用する、といったケースです。そのようなデータ設計ばかりだと頭が痛くなりますが、Notionだけで完結しないようにするのも1つの手段です。

例えば、その1つに FigJam があります。

 

FigJam

 

GTM内に設定するGA4のタグ、トリガーや変数同士が複雑に絡み合う場合は、FigJamを使って整理するのも良いでしょう。

 

GTM内に設定するGA4のタグ、トリガーや変数同士が複雑に絡み合う場合は、Figjamを使って整理する

 

NotionならFigJamを貼り付けるとプレビューとして参照してくれるのも便利ですね。

 

 

良いアナリティクスは良いデータから

GA4はスクロール、ファイルダウンロードや動画の再生など、拡張計測機能をオンにすることで自動にて計測してくれるイベントが増えました。

 

GA4はスクロール、ファイルダウンロードや動画の再生など、拡張計測機能をオンにすることで自動にて計測してくれるイベントが増えました

 

ユニバーサルアナリティクスの時は計測実装に手間がかかっていたようなイベント計測も、エンジニアリング知識のない方がGA4の管理画面からサクッとイベント計測をスタートできるようになりました。

 

例えば、GA4でのオーディエンストリガーイベントは異なるセッション同士でも条件を達成すればイベント計測を実施できるのです。

ユニバーサルアナリティクスでは、条件1を達成した際にCookieを付与し、条件2を達成した際に条件1でのCookieをもつユーザーだけにイベント計測を行う、といった計測を行うためのJavaScriptをGTM内に設置する方法で計測実装していました。GA4のオーディエンストリガーイベントでは、GA4のUI画面にてセグメントを作るように計測実装できてしまうのです。

 

これを便利と思う方も多いと思います。私もその1人です。

ただし、イベント計測の開始がとても身近になりすぎたとも言えます。複数人が複数のイベント計測を好き勝手、自由に作成してしまうとGA4でのデータ計測環境は、汚れて使いづらいものとなり、誰も近づかなくなってしまう恐ろしい未来も待ち構えています。アナリティクスを実行するものが使いやすいデータであることはもちろんのこと、機械学習といった側面からも「意図をもった整備されたデータ」の重要性は増していくはずです。

 

そのためにも、GA4の計測設計、実装時にドキュメントを残しておくのが重要のように思います。少し手間はかかってしまいますが、現在のデータはどこからどのように生まれているものなのかを何かに記録しておきましょう。

私の経験上ではありますが、Googleアナリティクスの計測実装は初回のみではなく数ヶ月、数年と追加&追加を繰り返して新たなデータを発生させていきます。それは老舗の秘伝のたれのようなものです。レシピがないと再現不可能なものになってしまいます。そのためのドキュメント化です。

 

良いアナリティクスは良いデータからはじめていきましょう。