昨年末、東急ハンズをこよなく愛する人々の間に激震が走った。
ホームセンター大手のカインズが親会社の東急不動産ホールディングスから買収することを発表したからだ。将来的にブランド名も変更されるということで、SNS上では早くも「カインズハンズになるの?」とか「縮めてカハンズとか?」などと予想する声が上がる一方で、なぜこのような事態になってしまったのかと困惑する人も続出した。
東急ハンズといえば、圧倒的な品ぞろえと、専門知識をもつ個性豊かな販売員が多くおり、「1日いても飽きない」「店員さんとの話に夢中になっていた」というファンも多くいる。2021年10月に、37年間の歴史に幕を下ろした池袋店のメッセージボードには、「私の青春そのものでした」「ハンズがなければ今の自分はありません」という熱い声が多く寄せられている。
そんな熱烈なファンがたくさんいるのだから、なにもカインズなどに身売りぜずとも、やりようによっては東急ハンズのままで事業継続できるのではないか。そう考える方たちがかなりいるのだ。
企業のM&A戦略にはさまざまな思惑が交錯しているので、東急不動産HDの「真意」は測りかねるが、データを見ている限りは東急ハンズ株の売却は、同社が「利益がほとんどでない体質」に陥っていたことが大きい。
『ハンズの低迷はコロナ前から続いていた。20年3月期のハンズ事業の売上高営業利益率は0%台だ。ハンズ事業は東急不動産HDの連結売上高の約1割を占めるが、営業利益は1%に満たない。低収益が続けば、「売却して収益性の高い新たな投資に振り向けるのが合理的」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の姉川俊幸氏)との声も市場で強まりかねない』(日本経済新聞 20年9月1日)
ファンの方たちからすれば衝撃だろうが、「なんでもそろう」「商品のプロがたくさん」という東急ハンズのビジネスモデルはすいぶん昔から、アマゾンなどのECサイトの急成長と、郊外型ホームセンターの急増によって「これまでのやり方を続けても稼げない」という状況に追い込まれていた。そこにコロナ禍がトドメを刺してしまった形なのだ。
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