タンパク質が取れる甲府名物の郷土料理「鳥もつ煮」がビールに合いすぎる!【美窪たえ】

料理家の美窪たえさんに、甲府市名物「鳥もつ煮」のアレンジレシピをご紹介いただきます! キンカンの代わりに卵黄を使ったレシピは、甘じょっぱくてコクがあり、ビールとの組み合わせが最高です!

こんにちは。料理家の美窪たえです。

本日は、鶏モツをこってり濃い目の甘辛醤油味で煮付けた山梨甲府市名物「鳥もつ煮」を、家で作りやすいレシピでご紹介します。

「鳥もつ煮」のメイン食材は名前からも分かる通り、鶏レバーやハツ、砂肝といった鶏モツ。それらを醤油と砂糖でシンプルに味付け甘じょっぱく煮付けた、ごはんに良し、ビールに良しの逸品です。豊富なタンパク質や鉄分などを含む鶏モツは栄養も満点。照りのある見た目が食欲をそそります!

鶏レバーと砂肝はスーパーでも新鮮なものが手に入りやすく、また値段も手頃で大変にありがたい食材ですが、鶏モツはどうしても「においが気がかり」「下処理が面倒そう」といったイメージが付き物です。ところが、実際にやってみると意外にすんなりと調理できて家でもおいしく食べることができます。この機会にぜひ試してみてください!

それでは早速作っていきましょう。

材料(2人前)

  • 鶏レバー(ハツ付き)……250g
  • 砂肝……250g
  • 卵……6個
  • 醤油……大さじ3と1/2
  • 砂糖……大さじ4

希少部位“心残り“はそのまま残す! 鶏レバーと砂肝の下処理について

鶏の臓モツ類は、豚や牛に比べると比較的クセが穏やかですが、ちょっとした下処理を施すことで、よりすっきりとした味わいに仕上げることができます。

今回はスーパーでも手に入りやすい「レバー(肝臓)」と「砂肝(胃の一部)」を使います。レバーは、ハツ(心臓)が付いた状態で一緒にパック詰めされていることが多いので、ハツの処理も併せてご紹介していきます。

■レバーとハツの下準備

1.まず、冷たい塩水を準備しておきます。

ボウルに水約500cc(分量外)と塩小さじ2(分量外)を入れて塩を溶かし、そこへ氷5〜6個(分量外)を加えましょう。

2.レバーとハツを切り離します。まな板に置いてみると、3つの塊に分かれているのが分かります。その中で1つだけころりとした形のものがハツ、それ以外がレバーですので、まずレバーとハツがつながっている筋を切ります(上の写真の、手を添えているのがハツ) 。

3.ハツを縦半分に切ります。中に赤黒い血の塊が入っているので、包丁の先でこそいで取り除きます。

丁寧に血の塊を取り除いておくことで、鶏モツ自体の味わいがすっきりとして食べやすくなるので、できるだけ取り除いてください。

ハツは根元に白い脂肪が付いていて、ヘルシー志向の方はつい取り除いてしまいたくなるかもしれません。実はこの部分、焼き鳥屋さんでは「心残り」と呼ばれる希少部位なんです。「ハツ元(ハツの根元)」と「ハツ紐(血管)」を合わせた部位で、とってもおいしいところなので、取り除かずに調理するのがおすすめですよ。

4.レバー同士もくっついた形をしていますので切り離した後、それぞれ半分〜3等分ほどに切りましょう。血の塊が出てきた場合は、こちらも包丁の先でこそいで丁寧に取り除いてください。

ハツもレバーもこの切り分ける段階で、余分な血の塊をある程度取り除いてしまうことができます。

5.切ったハツとレバーを1で準備しておいた塩水に入れ、その中でさらに血の塊を残さないように優しく丁寧に洗います。非常に冷たいですが、おいしい鳥もつ煮のために、ここは何とか堪えて頑張ってみましょう!

6.水気を切りながらキッチンペーパーを敷いたバットに上げていきます。しっかり水気を取り除いたら、レバーとハツの下処理は完了です。

氷入りの塩水で洗うことで、低温で鮮度を保ち、うま味を残しながら特有のにおいもすっきり落とすことができます。レバーの臭み抜きとして「牛乳に浸す」方法がよく知られていますが、新鮮なレバーなら血の塊を取り除き、塩水で洗うだけでも十分おいしくなりますよ。

■あえて「銀皮」を残すことがポイント! 砂肝の下準備

砂肝は、山が2つ繋つながったような形をしていますので、まずそれを切り離します。

砂肝は鳥の胃に当たる部位で、飲み込んだ小石や砂をためておいて、食べ物を砕くのだそう。ほぼ筋肉でできているため脂肪が少なく、淡泊な味わいとコリコリとした強い歯応えが特徴です。

特に「銀皮」と呼ばれる青白い部分は食感が硬いので、食べやすくするために切り込みを1本ずつ入れてから山なりになっている部分を半分に切りましょう。下処理として包丁で削ぐ方法もありますが、食べる部分が減ってもったいないのと、何より時間もかかります。

今回は硬い部分は付けたまま、半分に切るだけで砂肝の処理は完了です。

強い歯応えのある食感も砂肝の特徴の一つ。とはいえ噛み切りやすくなるように、硬い筋に切り込みを入れておくと、ぐんと食べやすくなりますよ。

彩りを加えてタンパク質も取れる「冷凍卵」が「鳥もつ煮」を盛り上げる

もう一つ、ぜひ使っていただきたい材料が「卵」です。

本場の鳥もつ煮では「キンカン(卵が形になる前の黄身の部分)」がよく使われますが、こちらはさすがに普通のスーパーではあまり見かけません。しかし卵の黄色が加わると、お料理に一気に華やかさが出ますよね。

そこで、今回使うのが「冷凍卵」です。

新鮮な生卵を冷凍庫に入れて、1〜2日凍らせます。凍ると膨張して殻が割れてしまうので、必ず器に入れラップをかけて冷凍してください。使うときは、冷凍庫から出して1〜2時間ほど自然解凍すれば準備完了です。

解凍して割ってみると、黄身は手で触っても割れないほど、もっちりと弾力が出ています。

内臓の一種であるキンカンの場合生食は難しいですが、新鮮な生卵を凍らせた「冷凍卵」なら、生で食べても大丈夫です。

ただし、凍らせることで殻が割れてしまう冷凍卵は、衛生面から長期保存はできません。解凍後はなるべく早く食べ切るようにしてください。

今回鳥もつ煮では黄身だけを使いますので、白身と分けておきましょう。

冷凍された白身はやや水っぽくサラサラになりますが、普通の卵白と同様に料理に使うことができます。かきたま汁やチャーハン、卵焼きなどでぜひ使い切ってください!

先に調味料を煮詰めておくことがポイント! 鳥もつ煮の作り方

材料が準備できたら、後は濃い甘辛醤油味に煮付けていきます。調味料はシンプルに醤油と砂糖のみ。これだけで、コクがあるのに飽きのこない、すっきりと後引く味わいに仕上がります。

1.フライパンに醤油と砂糖を入れ、中火にかけて煮詰めます。実はここが、鳥もつ煮をおいしく作る最大のポイント! 鶏モツは長時間加熱すると硬くなり内臓特有のにおいも強くなってしまいます。なので、先に調味料を煮詰めておき、鶏モツを加えたらできるだけ短時間で煮絡めるように加熱することがコツなのです。

焦がさないように時々混ぜながら、ヘラで引いた線がそのまま残るくらいの濃度を目安に5分ほどかけて煮詰めていきます。鶏モツを加えると特にレバーからかなりの水分が出ますので、事前にタレをしっかり煮詰めておくことが、こってり濃厚な味に仕上げるためのポイントです。

2.泡が細かくなってとろみが強くなったら、鶏モツを一気に加え、火を強めて(強中火〜強火の間くらい)ひと混ぜします。あとはそのまま強めの火で、時々混ぜながら5分ほどぐつぐつと煮ていきます。

3.煮汁が減って鶏モツ全体が醤油色にしっかり染まりツヤが出てきたら、冷凍卵の黄身を加えて火を止めます。冷凍卵は、余熱で温めるようにして半生で仕上げましょう。

そのまま粗熱が取れるまで5分ほど置けば、あっという間に鳥もつ煮の完成です! 先に調味料をしっかり煮詰めておくことで、鶏モツを加えたら煮込み時間5分という短時間で、こっくりとツヤのある素敵な煮上がりにできますよ。

ビールとの組み合わせが最高! 鳥もつ煮の楽しみ方

何はともあれ、まずは冷えたビールと一緒にいただきましょう!

短時間で煮付けたレバーは柔らかくてパサつきがなく、ハツはしっとり、砂肝はコリコリとした歯応えがたまりません。そして冷凍卵の卵黄は、余熱でより濃厚に。見た目はまるで生のようなのに箸でつかめる質感と、プチッという独特の歯ざわりが面白くレバーとよく合います。

刻んだ青ネギ(分量外)などをトッピングすると、見た目と味わいのアクセントになってよいでしょう。

こってり濃厚な甘辛味ですが、醤油と砂糖だけの味付けがシンプルでクドさがなく、ビールはもちろんごはんとの相性も最高です!

タンパク質がさらに加わる、「鳥もつ温やっこ」もおすすめ!

タンパク質をはじめ、鉄分や亜鉛といったミネラルなど、栄養豊富な鶏モツですが、楽しみ方のアレンジとしてお豆腐と合わせる「鳥もつ温やっこ」もおすすめです。

大豆のタンパク質がさらに加わり、ヘルシー感&ボリューム感も増してより食べやすくなります。

豆腐(分量外)はお皿にのせ、ラップをかけて電子レンジで軽く温めて(600Wで2分目安)水を切り、その上に鳥もつ煮をたっぷりのせれば出来上がりです。お好みで、かいわれ大根や一味唐辛子、ラー油(それぞれ分量外)をかけて、お楽しみください。

まとめ

濃厚な甘じょっぱさがたまらない、山梨甲府市名物「鳥もつ煮」。

栄養豊富な鶏モツの下処理は、一度覚えてしまえば他のお料理にも役立ちますので、ぜひこの機会に試してみてくださいね。

書いた人:美窪たえ

料理する人、食べる人。J.S.A.認定ソムリエ、SAKE DIPLOMA。OLからバーテンダー⇒日本料理人⇒フレンチコック⇒アメリカンデリという、異色の経歴を持つ料理家。料理のおいしさと酒への思いを発信するユニット[おとな料理制作室]としても活動。著書『おとな料理制作室へようこそ』(ワニブックス)が好評発売中。

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