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Googleの「ヘルプフル コンテンツ アップデート」は失敗だった? 否、重要なことの始まりだ

SEOのために書かれたわけではないコンテンツのサイトを高く評価するグーグルの「ヘルプフル コンテンツ アップデート」は、どんな変化をもたらしたのか。グーグルが僕たちに示している将来の方向性とは?
Moz, Dr. Peter J. Meyers[執筆] 2022/11/28 7:00 |

この記事では、グーグルが導入した検索アルゴリズム「ヘルプフル コンテンツ アップデート」が、どの程度“有用(ヘルプフル)”か検証した結果を紹介する。

現在、このアップデートは英語で書かれたコンテンツのみ対象だが、どんなサイトでどんな影響があったのか、アップデートの目指すところは何か、自分のサイトではこのアップデートをどうとらえるべきか、把握しておこう。

アップデート開始の前後2週間の推移を調べた

グーグルは、「ユーザー第一のコンテンツ」、つまりSEOのために書かれたわけではないコンテンツのサイトを高く評価する取り組み「ヘルプフル コンテンツ アップデート」の適用を2022年8月25日に開始した。

翌26日には、MozCastで測定している検索順位の変動が華氏92度に達した(気温とは関係なく、温度が高ければ変動が大きいことを意味する)。これは比較的高いように見えるが、アップデート開始の前後2週間は次のように推移した:

MozCastで測定している検索順位の変動(8月11日~9月7日、色の薄い部分がアップデート前、色の濃い部分がアップデート後)
  • 青い点線はアップデート開始30日間の平均値で、87度だった。
  • 検索順位の変動が最も大きかったのは8月23日(アップデート前)で、アップデート期間のいずれの日も上回ってしまった。
  • さらに具合の悪いことに、グーグルのデータセンターで障害が発生したことで検索結果が大混乱に陥ったため、8月8日~9日を30日間の平均値から除外しなければならなかった。

ひとことで言えば、ひどい状態だ。僕は混乱に対処するのが得意だと思っているが、これは夏の嵐で2週間降り続いた雨の中から特定の水滴1粒を見つけ出そうとするようなものである。

混乱状態が好きというなら読み続けてもいいが、そうでない人には最初に断っておきたい。ほとんどのサイトにとって、このヘルプフル コンテンツ アップデートの第1弾が大きな変化をもたらしたという明確な証拠は見つからなかった

平均値だけでは実態はわからない

アップデートが長引いていたため、僕は個々のドメイン名について、アップデートの開始前後2週間における検索トラフィック獲得の違いを見てみた。そうすることで、1日分の異常値をならして前後両方の曜日を合わせられるからだ。

※Web担編注 用語「検索トラフィック獲得率」について

以下の解説では「検索トラフィック獲得率」という用語がでてくるが、これはMozのデータにおける「Search Visibility(検索ビジビリティ)」の訳語として使っている。

Mozのツールが表示するSearch Visibilityという指標は「そのツールに登録している追跡キーワードでの検索のうち、どれぐらいを自分のサイトが獲得しているか」を0%~100%で示すもの。主に順位をもとにした想定CTRから算出しているため、順位の影響が強く、検索ボリュームの多寡は関係ない。

つまり「検索ビジビリティが50%下がった」は「検索順位が下がったことで検索トラフィックが50%下がった」を意味する。

すぐに明らかになった“敗者”は「Conch-House.com」だった(「敗者」はアップデートで検索トラフィックを失ったサイトを示す)。僕たちのデータセットでは検索トラフィック獲得率が50%近く低下していた。正直に言うと、ドメイン名にハイフンが入っていることに、ややマイナスの印象を持ったことは否めない。

次に、日々のデータを見てみた。

アップデートでトラフィックが減ったConch-House.comの検索トラフィックの推移

平均値からは、実態の半分もわからない。何があったにせよ、Conch-House.comは調査した4週間のうち20日間にわたって完全に検索順位から締め出されていた。しかし、この期間中に1日だけ、最大1万4000件のキーワードに対して検索結果に表示された。

MozCastのデータセットは限られているが、同じくMozのはるかに大規模なSTATデータセットでも同様のパターンを示している。

何があったのだろうか? それはわからないが、明らかに、ほぼ間違いなく、かなりの確率で「ヘルプフル コンテンツ アップデート」のせいではなかったと言えるだろう。

たまたま検索トラフィックが増加したコンテンツ

次は、僕がかなり興奮した例だ。

「WhiteHouse.gov」は、アップデート後に検索トラフィック獲得率が54%増加した。キーワードセットがかなり少なかったため、これも日々の数字を調べてみた。

WhiteHouse.govの検索トラフィックの推移

素晴らしい結果になっているのがわかるだろう。8月25日に急増しているのは明らかで(後半はやや勢いを失ってはいるが)、増加幅はあまり大きくはなかったが、より大きなデータセットでも同様の結果を確認できた。

賢明な人だったら、ここで分析を止めていただろう。しかし、僕は賢明な人間ではなかったので分析を続けた。というのも、ヘルプフル コンテンツ アップデートの課題の1つとして、グーグルは次のように明確に述べていたからだ:

有用でないコンテンツ自体だけでなく、そうしたコンテンツを比較的多く含むと判断されたサイトにあるコンテンツも、(中略)検索での掲載順位が下がります。

そこで検索順位が「上昇」または「下降」した特定のコンテンツを掘り下げて調べてみると、興味深い結果となった。WhiteHouse.govでは、ある特定のページの順位が明らかに上がっていたのだ。こういうページだ:

【日本語訳】
ファクトシート:バイデン大統領、学生ローンの借り手で支援を最も必要としている人々の救済措置を発表

8月24日、上記の画像のニュースが発表されると、その直後からメディアの注目が集まり、人々が公式の情報(つまりWhiteHouse.gov)に殺到した。このタイミングがヘルプフル コンテンツ アップデートと一致したのは、まったくの偶然だ。

この問題に関する君の見解は別にして、いくつか問うてみよう:

  • これは有用なコンテンツだろうか?
    ―― それはほぼ間違いない。

  • WhiteHouse.govは、このコンテンツを作成することで高い評価を得られるだろうか?
    ―― その可能性は非常に高い。

  • では、この検索トラフィック獲得率の向上はヘルプフル コンテンツ アップデートによるものだろうか?
    ―― おそらく違うだろう。

このブログ記事は有用なコンテンツか

そこで、調査をしてみた。ヘルプフル コンテンツ アップデートのために、ここ3週間で3日分ほどの睡眠時間を犠牲にしたと思う。

実は、アップデートが長くなるとSERPの変動につながる。グーグルの検索結果はリアルタイムの現象であり、ウェブは常に変化しているからだ。しかし今回は、明確な上昇はなく(少なくとも、最近の傾向と比べて明確な上昇はなかった)、以前は有望だと思われたコンテンツは結局、すべて物足りない結果に終わった。

では、このアップデートは失敗だったということだろうか?

僕は失敗だとは思わない。そうではなく、これは何か重要なことの始まりだと思う。

品質に問題があるのが明らかなサイトにおける特定の影響についての報告は、正確である可能性が非常に高い。何より報告の一部は、僕が尊敬し、信頼できるSEO担当者によるものだ。

僕が思いつく最も有力な説明は、これが「有用性」という要素を世に出す第一歩だったというものだが、この要素を繰り返して強化していってコアアルゴリズムに完全に組み込むには、グーグルをもってしてもかなりの時間がかかるだろう。

依然として残る謎の1つが「なぜ、グーグルはこのアップデートを事前に発表することにしたのか」という点だ。

これまで、モバイルフレンドリーやHTTPSなどのアップデートでは、事前に発表することで僕たちに変更を促すのがグーグルのやり方だった。そして率直に言って、これは有効だった。しかし今回の発表は、アップデート開始のわずか1週間前であり、グーグルがすでに関連データを更新した後だった。つまり、事前の発表から開始まで時間がなく、何も修正できなかったのだ。

結局のところ、グーグルは将来の方向性について僕たちにシグナルを送っているのであり、僕たちはそのシグナルを真剣に受け止める必要があるのだ。

過去のアップデートを振り返る

HTTPSアップデートを見てみよう。2014年に初めて開始されたとき、検索順位の変動はほとんど見られず、MozCastによるとオーガニック検索結果の1ページ目に表示されたHTTPSのURLは約8%にすぎなかった。

グーグルは徐々に情報発信を強化し、Chromeでは非HTTPSサイトに対して警告が表示されるようになった。2017年には、MozCastによるとオーガニック検索結果の1ページ目に表示されたURLの50%がHTTPSだった。2022年9月現在、これは99%になっている。

「ヘルプフル コンテンツ アップデート」は、一夜のうちに状況を大きく変えようとするものではないだろうが、実際は変わっていくだろうし、僕たちは皆、新たなルールを学び始めた方がいい。

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