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AWSジャパン、仮想デスクトップなどの拡販に自信 監査法人なども利用 テレワーク需要で追い風か

» 2020年04月23日 18時16分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]

 アマゾン ウェブ サービス ジャパンは4月23日、オンライン記者発表会を開き、パブリッククラウドサービス「Amazon Web Services」(AWS)の最新動向や活用事例を紹介した。新型コロナウイルスの感染拡大に伴って在宅勤務に移行する企業が増えたため、仮想デスクトップ(VDI)サービス「Amazon WorkSpaces」、クラウド型コンタクトセンターサービス「Amazon Connect」などの需要が高まっているという。両サービスは、一般企業をはじめ、監査法人やコールセンターなど、多様な業態で利用が進んでいるとしている。

 AWSジャパンの瀧澤与一氏(技術統括本部 レディネスソリューション本部 本部長)は「社会やユーザーの環境が変化しているが、これに柔軟に対応できるのがクラウドやAWSのメリットだ」と強調した。国内IaaS市場で首位に立つAWSにとって、今回のテレワーク需要増はさらなる追い風になりそうだ。

photo AWSの仮想デスクトップ(VDI)サービス「Amazon WorkSpaces」

監査法人がAWS活用でテレワーク

 発表会では、AWSを活用してリモートワークを実現している法人の代表例として、仰星監査法人のパートナー(共同経営者)で公認会計士の金子彰良氏が登壇した。金子氏によると、同法人は2015年からAmazon WorkSpacesを使用している他、仮想サーバ「Amazon EC2」、クラウドストレージ「Amazon S3」「Amazon WorkDocs」などを相次いで導入。往査先から電子化した書類を閲覧したり、BCP(事業継続計画)対策として監査調書をクラウド上で保管したりといった用途に対応してきた。

photo AWSジャパンの瀧澤与一氏(=左)、仰星監査法人の金子彰良氏(=右)

 また、仮想デスクトップはシンクライアント仕様とし、端末上で作成・閲覧した監査調書などをローカル環境に残さず、全てクラウド上に保管する体制を整備。端末の紛失リスクにも備えている。こうした環境を以前から設けていたため、新型コロナ禍によって4月から在宅勤務に移行した際も、所属する会計士などは問題なく業務と意思疎通ができているという。金子氏は「現在はWorcDocsが110サイト、WorkSpacesが330ユーザー分稼働している」と語り、多くの従業員がAWSを活用したテレワーク環境を利用していると強調した。

photo 仰星監査法人が利用しているシステム

 ただし、監査法人側がクラウド活用を進めていても、監査を受ける側の企業がそうではない場合があり、一部では決算に関する監査業務に遅れが出ているという。金子氏は、Amazon WorkDocsなどを使って書類をやりとりしない場合の業務フローについて、「被監査会社のオフィスを訪問し、密閉された空間でインタビューをしたり監査資料を見たりする。資料は、紙やUSBメモリを手渡される場合もある」と説明。新型コロナウイルスの感染を防ぐため、こうした企業の監査は延期する場合があるといい、「クラウドを活用した監査には被監査会社の協力が不可欠だ」と呼び掛けた。

自宅にいながら会社の固定電話に出られるAmazon Connect

 テレワークの普及に伴って利用が増えているAmazon Connectは、PBX(構内電話交換機)をクラウド化したシステムで、オフィスの固定電話にかかってきた内線・外線を社員のスマホやPCに転送したり、「○○をご要望の方は1番を押してください」といった音声を自動で流すことが可能だ。

photo 「Amazon Connect」の特徴

 同サービスを活用すると、自宅にいながら会社の固定電話に出られるため、一般社員やコンタクトセンターのスタッフは電話対応のために出社する必要がなくなる。AWSジャパンの瀧澤氏は「セットアップが数分で完了するため、(導入企業の)オペレーターは在宅でコンタクトセンター業務ができている」と自信を見せた。

 同ツールの昨今の主な導入企業には、文具大手のプラス、スーパーマーケットのカインズ、ITアウトソーシングのトランスコスモス、紳士服販売のAOKIホールディングスなどがあるという。

「Amazon Chime」でZoomなどに対抗

 AWSジャパンはこれらの他、ビデオ会議サービス「Amazon Chime」、クラウド型VPNサービス「Amazon Client VPN」などもテレワーク環境に適していると判断。Amazon WorkDocsやAmazon WorkSpaces、Amazon Connectを含む各サービスを期間限定で無償提供するなど、拡販に向けた準備を進めている。

 ただしAmazon Chimeは、市場でトップを走るAWSのサービス群でありながら、「Microsoft Teams」「Skype」「Zoom」といった他社サービスに認知度の面で後れを取っている。今回のオンライン記者発表会もAmazon Chimeで行われたが、報道関係者からは「初めて知った」との声が出た。これを受け、瀧澤氏は「幅広いセキュリティ要件やコンプライアンスに対応できる点を差別化要因とし、Amazon Chimeをエンタープライズの顧客に訴求したい」と語った。

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