【2月16日 AFP】スリランカ政府が、外貨流出防止目的で輸入を禁止したことから、カレーに不可欠なスパイス、ターメリック(ウコン)の供給が滞り、市民から怒りの声が上がっている。

 スリランカでは、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)が観光業を直撃し、外貨の流入が止まった。政府は今年中に45億ドル(約4800億円)の対外債務を返済しなければならず、昨年3月に多数の品目について輸入規制を実施した。

 自動車、床用タイル、機械部品などが対象だが、市民の怒りを最も買ったのはターメリックだった。

 ターメリックはカレーのみならずスリランカ料理には欠かせない食材で、健康サプリメントとしての需要も高まっている。スリランカのターメリックの年間消費量は7500トンだが、国内生産はそのわずか5分の1にとどまっている。

 新型コロナの流行以来、ターメリックの価格は1キロ当たり9000スリランカ・ルピー(約4900円)と20倍に値上がりした。これは、スリランカの、大半の労働者の1週間分の賃金に相当する。

 ある医療従事者は、「ターメリックがこんな大問題になるなんて、考えもしなかった。当たり前のものだと思っていた。今ではターメリックを毎日の料理に使うこともできない」と話した。

 税関当局は、インドから「タマネギ」と書かれたコンテナに入れられたターメリック25トンを押収した。海軍もインド人の漁師から数トンのターメリックを押収している。

 当局は、ターメリックが市場にあふれ、価格が下落するのを防ぐためだと説明している。一方、ターメリックを手に入れたい市民は、押収したターメリックを当局が焼却処分するのを、どうすることもできずに見つめるだけだ。

 スリランカ政府は、数十万におよぶ失業者に職を提供するため、安価な輸入品に頼るのではなく、地元でのターメリック生産に力を入れたいと考えている。スリランカの昨年の経済成長率は史上最低のマイナス3.9%になる見通しだ。

 当初3か月の予定だった輸入規制は、少なくとも今年中は継続することになった。

 米国に次いでスリランカの最大輸出先である欧州連合(EU)は、スリランカの輸入規制を世界貿易機関(WTO)に報告する可能性もあるとしている。しかし、スリランカ中央銀行の経済研究部門責任者は12日、債務不履行に陥るよりも、貿易上の報復措置を受けるリスクを取る方がましだと指摘した。(c)AFP/Amal JAYASINGHE