てづくりとうふ すがいの京飛竜頭

先週、仕事で大阪出張があり、これ幸いと京都の実家にも数日、滞在してきました。
今回も、大村さんのゆかりのお店や名所を巡る中で、新たな発見がありました。下鴨の「てづくりとうふ すがい」さんです。

大村さんは『美味しいもんばなし』(鎌倉書房)のなかで、自分のお気に入りの豆腐屋さんの一つとして、すがいさんを紹介しています。
同書の中で「京飛竜頭が仲間入りをした」「からしどうふがおいしい」と書かれています。

てづくりとうふ すがいの京飛竜頭。予約制です。


お店に足を運んで、少しお話をうかがうと、手を留めて、ご主人と女将さんが、当時の様子を丁寧に説明してくださいました。


大村さんのご存命の頃、すがいさんは、澤正さん、豆福さん(名古屋)とも親しくされていて、大村さんと非常に仲の良いご友人だったのです。事情を知らずにうかがったので、まさか、そんなに深い思い出話が聞けるとは、なんとうれしいことでしょうか。


『美味しいもんばなし』を読み返すと、「まだまだ可能性を秘めてなさる若いお二人」と、ご夫婦を紹介されていました。

梅の花を模した小さなお揚げ「都ぶり」。商品名は大村さんの命名だそうです。こんな洒落たお揚げは、はじめてみました。


著書にある「京飛竜頭」は、そもそもはNHKの「きょうの料理」出演のために、すがいさんが大村さんの説明を受けてお作りになったことがわかりました。

京都では飛竜頭を「ひろうす」と読み、地方では「がんもどき」とも呼ばれています。
しかし、昔のものは三角形に作り、中にはぎんなん(2個)、ゆり根、ささがきごぼうなどが入っていて、外に具材は見えません。
京飛竜頭は、ひろうすのかつての姿を再現したものなのです。
また、ご主人から京飛竜頭は、「きょう ひろうす」ではなく、「きょう ひりょうず」と読むと教わりました。
すがいさんは、大村さんから、本来の読み方を伝授されていたのです。

 

帰宅してから、著書を確認したところ、『京のおばんざい』(光村推古書院)、『京のおばんざい』(中央公論社※)に、”ひろうす”についての記述を見つけました。
読み方や、三角形の形状は龍の”頭”、ぎんなんは”目”、ゆり根は”ウロコ”、ささがきごぼうは”ひげ”を表しているとご主人の説明してくださったことも書かれています。


『京のおばんざい』(両著とも)では、”ひろうす”は、お彼岸にくず引きのおつゆの中に入れて、おろししょうがを添えて食べる習慣とともに解説されていました。

※『京のおばんざい』光村推古書院版と、中央公論社版は、同名ですが、全く違う内容の本です。光村版は朝日新聞京都版の連載「おばんざい」をまとめた一冊です。

すがいさんの定番「にがりとうふ 極」。商品の説明書きによると、すがいさんの商品は厳選された大豆と下鴨の名水を用いて昔ながらの製法で手づくりされています。また、合成保存料、化学調味料は使用していません。


すがいさんの京飛竜頭は、非常に手間がかかるため、予約制となっています。
一般的なひろうすと違い、表面に具材が見えている状態では、調理中に割れてしまうため、具材は中に封じ込められていなくてはいけない。
そんな説明をお聞きすると、完成までに大変なご苦労があったことがうかがえます。

大村さんがご紹介になった随筆を、ある昭和の大女優が目に留めて、頻繁に進物にお使いになっていたそうです。
そこから、歌舞伎界の方々へと人気が広まったという逸話も。

予約制と知らなかったので、送料をお支払いして、後日、京飛竜頭を送っていただきました。
受け取ってビックリしたのは、重量感。スーパーで売っているスポンジのような「ひろうす」とはわけが違います。
中に入っている、ささがきごぼうの、なんと薄くて細かいこと。

近所で九条ネギを買って、一緒に炊いてみました。
ずっしりしているのに、中は柔らかで口ほどけがよく、具材の風味も感じられてとても美味しい。驚きもあっておいしくて。多くの人に知ってほしいお味です。

九条ネギとともに炊いて、しょうがを添えてみました


現在は全国へ配送もなさっています。
クール宅急便なんてなかった時代、大村さんの随筆を呼んだ地方の方から、配送の問い合わせがあったのをきっかけに全国配送も始められました。
手探りで始められた地方発送のお話しも、とても興味深いものでした。

現在はお店の2階でお食事(おとうふ・あげ・ゆばなど/予約制)もできるようになっています。次回はこちらにもお邪魔したいと思います。

すがいさんのホームページ http://www5f.biglobe.ne.jp/~tofusugai/
facebookもあります https://www.facebook.com/tedukuritofusugai