“かかりつけ医”の受診減少 新型コロナ感染への不安から

“かかりつけ医”の受診減少 新型コロナ感染への不安から
新型コロナウイルスに感染しないか不安に感じるなどして、患者が“かかりつけ医”への受診を控える動きが広がっています。医療情報サイトが、先月行った調査では、診療所の医師およそ1460人のうち86%が「外来患者が減った」と答えました。こうした中、かかりつけ医からは「治療が必要な患者が来なくなった」とか、「健康状態が把握できない」といった懸念の声も上がっています。
千葉県船橋市の「土居内科医院」には、ぜんそくや高血圧、それに糖尿病などの患者が多く通院していますが、「緊急事態宣言」が出されて以降、「感染が怖いので受診を控えたい」という人が増えたといいます。

患者数は去年に比べ平均で20%近く減っていて、ふだんは患者が多い土曜日の午前中も先週はいつもの半数にとどまりました。

これまで2週間に1度来院していたのに診察を2か月先まで延ばす人も出てきています。

医師は症状を我慢したり服薬を中断したりすることで、状態が悪化するのではないかと心配しています。
土居良康副院長は「定期的に来る人というのは、ちゃんと来るからこそ『ああこの人大丈夫なんだな』と私たちは思っているし、そうじゃなくなるというのは怖いですよね。診療所に来ないことで救急搬送が必要になるほど持病が悪化しては元も子もないので、異変を感じたらためらわずに受診してほしい」と話しています。
受診を控える動きは小さな子どもを持つ親たちの間でも広がっています。

東京・町田市の小児科「はやしクリニック」では患者数が通常の3割ほどになっています。

ふだんなら、症状が軽いうちに診察に来てくれる親子がかなり悪化してから来院するケースも目立つようになりました。

今週日曜日に1歳10か月の男の子を連れて受診した母親は「4、5日前から熱が続いていて、いつもなら熱が出てすぐに病院にいきますが、熱があって病院に行くのもどうかと思うし、逆にちょっとした症状しかないのに病院にかかることでもらってくるのではと両方で悩みます」と話しました。

また、ふだん、この小児科を利用している母親は5歳の息子が3月以降のどの痛みや発熱の症状が出て受診すべきかどうか判断に迷った経験を振り返り、「本当はもっと早く解決したかったのですが、例えば検査のために大きな病院に行かなければならなくなった場合、ウイルスに感染したらどうしようという不安もありました。自分の周りの母親たちからも病院に連れていくのが怖いという話をききます」と話しました。
こうした状況について、林泉彦医師は「特に小さいお子さんは分からないことの塊です。それを常に相談して、例えばかぜにかかっても、心の発達の問題とか、皮膚のトラブルとか、解決するのが小児科で、それができなくなっています。憂慮すべき状況だと思います」と話しました。

診療所では先月から臨時で電話での診療を始めました。

自宅での療養方法について指示したり、必要な場合には通院をすすめたりしていて林医師は「話を聞くだけで、今、緊急性があるか、急いだほうがいいかくらいは分かるので不安を抱えているお母さんたちのハードルが下がるわけですから現状の新型コロナの流行下では意味があると思います」と話しました。
地域のかかりつけ医はどう対応していけばいいのか。

全国保険医団体連合会の山崎利彦理事は「体調が悪いことを我慢しないといけないと思い込んでいる患者さんがたくさんいるので、受診を控えていて大丈夫かあるいはきちんと行ったほうがいいのかふだんかかっているお医者さんと相談していただきたい」と述べ、医師と患者のコミュニケーションがより重要になっていると指摘しています。