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【NBAファイナル展望】バックス対サンズ

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Devin Booker Phoenix Suns Khris Middleton Milwaukee Bucks

スター選手の負傷が頻発したNBAのポストシーズンは、好まれないながらもふさわしいフィナーレを迎えるかもしれない。NBAファイナルで、ミルウォーキー・バックスのヤニス・アデトクンボは出場できるのだろうか。そして、期待通り彼が出場できる場合、どれほど健康なのだろうか?

フェニックス・サンズとの対戦を論じるために、MVP受賞2回のアデトクンボが出場できると仮定しよう。その場合、最大のスターのひとり(アデトクンボ)を欠くことなく、初のNBA優勝を懸けてブレイクしたスター(デビン・ブッカー)や確立されたスター(クリス・ポール)と戦うファイナルとなる。

プレイオフでショットの問題を抱えてきたアデトクンボだが、それが必ずしも続くとは限らない。フリースローや長距離ショットがうまくいかなくても、彼がドリブルから大きな脅威となり、相手チームを警戒させることは変わらない。最高級の守備もある。サンズはカンファレンス・ファイナルでカワイ・レナード(ロサンゼルス・クリッパーズ。右ひざ捻挫のためシリーズ全休)と対戦しなかった。アデトクンボは、サンズがプレイオフで対戦相手の中で最大の守備の脅威となるかもしれない。

バックスはチーム全体も守備が優れている。特に、ドリュー・ホリデーやクリス・ミドルトン、ブルック・ロペス、PJ・タッカーの存在を考えればなおさらだ。彼らはしつこくてアグレッシブな悪魔たちである。サンズは、ブッカーやポールが苦戦するわけにいかない。レナード不在のクリッパーズ相手に頻繁にあったことだが、その場合、ファイナルは短いシリーズになるだろう。

同様に、バックスはロングボール次第の傾向にある。タッカーやパット・カナトンといったロールプレイヤーたちは、オープンな状態でも常にショットを決めているわけではない。それはミドルトンとホリデーの重圧が増すことになる。それらのショットが頻繫に決まらなければ、バックスは勝利の選択肢をひとつ失う。

NBAファイナル2021は、ショットが優れた2チームの対戦であり、片方はリーグ有数の守備を誇る。そしてもう片方のチームには、16年のキャリアで唯一手にしていない栄冠を求め、多くの共感を生む世代を代表するポイントガード(ポール)がいる。

アデトクンボが休むことになれば、サンズは4ラウンド連続で驚くべき幸運を手にすることになる。彼らはアンソニー・デイビス(ロサンゼルス・レイカーズ)とほとんど対戦する必要がなく、ジャマール・マレー(デンバー・ナゲッツ)やレナードとは対戦しないままだった。彼ら全員、あるいは一部が健康だったら、サンズはここまで来ていないという声もある。

ファイナルは、もっと良いフィニッシュと運命にふさわしい。トロフィーを掲げるべきは、最も健康なチームよりも、最高のチームであるべきではないだろうか?

3つの注目ポイント

1. ディアンドレ・エイトン

サンズのディアンドレ・エイトンは、3年目にしてある種のブレイクを遂げた。プレイオフでは堅実な戦いぶりで、最も影響を及ぼしたときや、試合を支配したこともある。それは、彼のハードワークと挑戦への意欲の賜物だ。

ただ、挑戦というなら、彼は守備で脅威となるセンターと対戦していない。ロペスやボビー・ポーティスとの対戦は、やや大変だろう。それに、エイトンが問題になれば、バックスはアデトクンボを使うはずだ。より高いグレードのビッグマンを相手に、エイトンがどのようにプレイできるか注目だ。

2. ドリュー・ホリデー対クリス・ポール

ホリデーはカンファレンス・ファイナル初戦でトレイ・ヤング(アトランタ・ホークス)に48得点を許した。だが、以降は攻守両面で改善し、力強くフィニッシュしている。ミドルトンがブッカーを守るとすれば、次にホリデーがマッチアップするのはポールだ。

バックスが1巡目指名権なども手放し、ホリデーと大型の延長契約を結んだのは、まさにこのためであると言えよう。彼は守備で違いを生み出し、タイトル獲得に貢献できる選手だ。一方、キャリアで唯一欠けているものが優勝だけなだけに、当然ポールも必死だろう。そのポールにもう1年優勝を追い求めさせることができれば、ホリデーはバックスにトレードや大型契約を後悔させないで済むことになる。ホリデーには、ポールに守備の仕事をさせることが必要だ。攻撃でポールがもたらすエネルギーを奪うためである。

3. ヤニス・アデトクンボのジャンパー

小柄なサンズを相手に、アデトクンボはジャンプショットで満足するだろうか? もし満足なら、サンズの手中にあるも同然だ。エイトンを除き、サンズには質が高くてサイズのある選手が多くない。特に試合の序盤でアウトサイドのレンジを試すのは、アデトクンボにとって悪い戦略ではないだろう。

外しても痛手ではなく、決まれば相手の守備は彼に対してさらに敬意を払うようになり、ドライブするレーンが空く。アデトクンボは賢く自分のスポットを選ぶだろう。ミドルレンジジャンパーを織り交ぜながら、できるだけファウルをもらおうとするはずだ。

興味深い数字

105.8

攻撃の効率という点で、今季は歴史的なシーズンだった。だが、ファイナルにたどり着いたのは、プレイオフで攻撃が全体の10位と11位という2チームだ。バックス(105.0)とサンズ(106.7)は、守備で1位と2位にある。100ポゼッションあたりで相手に許したのは両チーム合計の平均で105.8得点。ほかの14チームの平均(115.4)より10得点近く少ない。

良い守備は、トランジションで始まる。『Synergy tracking』によると、トランジションからのポゼッションで相手に許した得点は、バックス(0.93)もサンズ(0.97)も1得点に満たない。制限区域内からの相手のフィールドゴール成功率でも、彼らは1位と2位だ。サンズはペイント外からの相手のエフェクティブFG成功率も1位(44.8%)。バックスも相手のフリースロー率(FG100本中19.5本)が1位の数字だ。

サンズは今季最も効率の良い試合でカンファレンス・ファイナルを締めくくった。クリッパーズとの第6戦は、わずか94ポゼッションで130得点をあげている。一方のバックスはアトランタ・ホークスに勝利した4試合で、100ポゼッションあたり123得点超だった。レギュラーシーズンで攻撃がトップ10以内だった両チームだが、彼らは最高級の守備でここまでたどり着いている。その2チームが、互いを相手に効率よく得点しようと対峙するのだ。

— John Schuhmann

予想

純粋に成績の面から言えば、より失うものがあるのはバックスだ。昨季までの2シーズンは、リーグ最高成績を収めながらプレイオフで勢いを失うものだった。マイク・ブーデンホルザー・ヘッドコーチは、ソーシャルメディア上で何度も「クビ」と言われ続けた。その彼が、優れた戦術家でモチベーターのモンティ・ウィリアムズHCとファイナルで対戦する。アデトクンボも、シーズンMVPに2度輝きながら、まだ優勝リングを手にしていない。それらは1971年以来の優勝に向け、十分にバックスのモチベーションとなるはずだ。

繰り返すが、これらはアデトクンボの健康が100%と仮定した場合の話だ。バックスは守備でより優れ、ベストプレイヤーたちを擁し、個々のマッチアップも主にバックス有利だ。第6戦でバックスが優勝と予想する。

原文:NBA Finals preview: Can Bucks put clamps on determined Chris Paul, Suns? by Shaun Powell/NBA.com(抄訳)


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