構造色を生み出すインクジェット技術を開発
構造色を生み出すインクジェット技術を開発 / Credit:jp.depositphotos(左)/富士フイルム株式会社_「構造色インクジェット技術」新開発(2022)(右)
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モルフォ蝶と同じ「構造色で色付けする新しいインクジェット技術」(富士フイルム)

2022.03.24 Thursday

自然界には、物体そのものの色(色素)に頼らず、微細構造によって発色する「構造色」があります。

モルフォ蝶やタマムシはその代表的な例であり、鮮やかな色が特徴的です。

そして最近、富士フイルム株式会社は、この構造色をつくりだすインクジェット技術を開発しました。

角度によって色が変化するような印刷も可能になります

詳細は、2022年3月23日付の『富士フイルムのニュースリリース』に掲載されました。

「構造色インクジェット技術」新開発 https://www.fujifilm.com/jp/ja/news/list/7724

微細構造で発色する「構造色」

物質が特定の波長を反射することで「色」が生じる
物質が特定の波長を反射することで「色」が生じる / Credit:Depositphotos

物質そのもののは、色素がもつ「可視の吸収・反射」効果によって生じています。

例えば、赤色の物質は光に含まれる赤色の波長だけを反射し、それ以外の波長を吸収。

そのため私たちの目に届くのは赤色の波長だけであり、結果として「赤色」に見えるのです。

同様の原理で、すべての波長を反射するものは白色になり、すべての波長を吸収するものは黒色になります。

しかし、私たちが「色」を認識しているものの中には、この色素以外の原理で生じているものがあります。

それが「構造色」です。

構造発色の原理
構造発色の原理 / Credit:lexus.jp_LEXUS、国内累計販売台数50万台達成を記念し、特別仕様車を発売(2018)

構造色とは、光の波長レベルの微細構造によって生じる発色現象であり、その構造によって特定の波長だけが強調・反射されることで生じます。

自然界で見られる構造色の代表的な例としては、タマムシ、モルフォ蝶、貝殻などがあります。

自然界にみられる構造色
自然界にみられる構造色 / Credit:富士フイルム株式会社_「構造色インクジェット技術」新開発(2022)

例えばモルフォ蝶は、実際に青い色素を持っているわけではありませんが、その表面の構造によって青く輝いて見えるのです。

また構造色は、その微細な構造が壊れない限り、鮮やかな色を保つことができます。

一般的な顔料で生じる「退色」とは無縁なのです。

鮮やかなモルフォ蝶。しかしひっくり返すと色がないことがわかる。
鮮やかなモルフォ蝶。しかしひっくり返すと色がないことがわかる。 / Credit:Advanced Science News(YouTube)_Bio-Inspired Bright Structurally Colored Colloidal Amorphous Array Enhanced(2017)

この構造色については、人工的に再現して利用する方法も研究が進められていて、2018年には外板に青の構造発色を利用した「LEXUS」が販売されたり、また2020年も構造色で絵画を再現するという研究が発表されたりしています。

色を塗らずに「構造色だけ」で絵画を再現することに成功!未知の色が見られるかも?

そして今回、富士フイルムが顔料を含まず構造色だけで色を作り出すインクジェット技術を完成させたのです。

次ページ微細構造をつくって発色させる「構造色インクジェット印刷」

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