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SEO上級テク: “最適化”だけでなく“テスト”してみるといい5つの手法(前編)

SEOを極めるには、定番の「最適化」だけでなく、「失敗するかもしれないけど試してみる」のも大切だ。そうしたテストの具体的な内容や手法を解説する。あなたがまだ試したことがないテストがあるはずだ。
この記事の内容はすべて筆者自身の見解であり(ありそうもないことだが、筆者が催眠状態にある場合を除く)、Mozの見解を反映しているとは限らない。

SEOには作業の結果が不確実なものや予測が難しいことが多く、「テストしてみるべきか」「しないべきか」判断するのは難しい。そこで、実は試す価値があるテスト5つと実施方法を前後編の全2編でお届けする。

実は試す価値のある5つのSEOテスト(実施方法の解説付き)
  1. URLの変更(この記事)
  2. コンテンツの更新(この記事)
  3. セクションの配置替え(後編記事)
  4. コンテンツの削除(後編記事)
  5. 強調スニペット(後編記事)

この記事では前編として、テストの前に知っておきたいことと、「① URLの変更」「② コンテンツの更新」を解説しよう。

テストする価値はあるか、それともないか

テストを紹介する前に覚えておいてほしいことがある。「最適化」と「テスト」には、次のような微妙な違いがあるということだ:

  • 何かをテストすることは、好奇心を発揮する行為
  • 何を最適化することは、確実性を求める行為

何らかの行為をする前にその結果がわかっている場合、それは最適化の領域になる。たとえば、次の行為は、良い結果をもたらす可能性が高い:

  • どこからもリンクされていないページを大量に発見した場合、それらのページに内部リンクを張る

このシナリオは、「テストする価値がない」と見なせる(実行する価値がないのではなく、意味があるかどうかを判断するまでもないという意味)。

しかし、これから説明するように、SEOには次のような性質をもつ多種多様な施策が有り得る:

  • 作業の結果が不確実なもの
  • 結果の予測が難しいもの

サイトを移行したことがある人は、その経験を思い出してみてほしい。新しいサイトが元のサイトより良いパフォーマンスをもたらすと確信していただろうか。おそらく確証はなかっただろう。

これは「テストする価値がある」と見なせるシナリオかもしれない。言い換えれば、「テストする価値がある行為」とは、「データを使って結果を測定するまでは、どのような結果になるかわからない行為」のことだ。

統計的有意性に関する注意

もう1つ、覚えておいてほしいことがある:

“統計的有意性”は、厳密で高度なA/Bテストを通してのみ証明できる。

つまり、何らかの施策が価値をもつかどうかを確信をもって判断するには、「なんとなく」や「ざっくりとしたデータ」ではなく、正しくデータを処理しなければいけない。ということだ。

そしてSEOのA/Bテストには厳しい現実がある。それは、「本質的には厳密で高度なA/Bテストにはなり得ない」ということだ。

というのも、いわゆるコンバージョン率などの一般的なA/BテストとSEOのA/Bテストには次のような違いがある:

  • 一般的なA/Bテスト: 同じ時期に訪問者を複数のセグメントに分け、どちらのほうが成果が良いかを判断する

  • SEOのA/Bテスト: 対象が検索エンジンであるため、「ある期間はこの内容、また別の期間にこの内容」と変えて検索評価の変化をみる

こうした時間ベースのSEOテストで得られるのは、絶対的な結論ではなく方向性でしかない。

ただし、こうした方法で実験する利点もある。たとえば次のようなことだ:

  • より迅速に対応できる
  • より少ないリソースで実行できる
  • 一般的なA/Bテストでは不可能なほぼあらゆる検索環境で実験できる柔軟性が得られる

とはいえ「統計的に有意であると確信をもって判断できないテストでは意味がない」と考える人がいるかもしれない。そういう人のために、統計的に有意でないテストの結果をもとに価値を判断する考え方の1つを紹介する。次の図を見てほしい:

図はテストの差を棒グラフで表しており、その差の大きさで次のように考えられる:

  • 左端は「博打的」テスト結果だ(仮説をもとにしたテストで、オリジナルと大きな差がない)。信頼性が低く、投資価値も少なく、得られる洞察はあまり信頼できない。

  • 右端は本来の統計的に有意なテスト結果で、90%や95%の信頼区間で判断できており、この結果をもとにより多くのリソース投資を判断してもいいだろう。

  • その中間には、「方向性について洞察が得られる」多くの優れたSEOテストがある(ただし、方向性を示す洞察が科学的確実性によって保証されていない場合もある)。

これらの観点を踏まえて、「目立たないし、テストする価値がないように見えて、実は最適化に見せかけたSEOテスト」を5つまとめてみた。

① URLの変更

URLを変更するテストは、SEOのtitle要素変更テストと非常によく似ている。URL変更テストの考え方は単純だ。ページタイトルと同様、URLも検索順位の決定要因として大いに重視されていることがわかっているため、

  • 最適化されていないように見えるURL
  • ターゲットキーワード、検索意図と合わないURL

があることが判明した場合は、新しいURLをテストして元のURLをリダイレクトさせる方がいいという仮説を立てられる。

このテストを挙げたことに対して、静かにキレている人がいるかもしれないが、これには理由がある。URLの変更テストはリスクが非常に高くなることもあるからだ。元のURLがすでに多くの(サイト内または外部)リンクを獲得している場合は、URL変更テストの前に細心の注意を払ってほしい。

すでにご存知だろうが、リダイレクトは逆効果になる可能性がある。つまり、テストが失敗した場合、元のURLに戻すのは、title変更テストで元のtitleに戻すほど簡単ではない。

しかし、僕は次のようなケースでURL変更テストが成功した例をいくつも見てきた:

  • 新たに公開したURLがターゲット
  • ターゲットURLを参照するリンクが極めて少ない
  • ターゲットURLがかなり非効率でリスクが高い実験に見合う価値がある

このように、リスクの低いシナリオでURL変更テストを実施するのであれば、怖がることはないのでテストしてみよう。

URL変更テストの実施方法

それでは、実際にURL変更テストの実施方法を紹介しよう。

  1. URLの現在のトラフィックレベルを確認する。
    トラフィックレベルが高い = リスクが高い = 失敗したら取り返しがつかないダメージの可能性あり

  2. URLのサイト内リンクと外部リンクを確認する。
    サイト内リンクは更新できるが、外部リンクも(302または301)リダイレクトすると効果が落ちる可能性がある。

  3. リスクが許容範囲内であれば、新しい仮説を立てて、テストするURLをどのように変更するかを明確にする:
    仮説の例: URLの文字列を部分一致から完全一致に変更することで、ページとターゲットキーワードの関連性が強くなり、ターゲットキーワードの検索順位とクリック数が増加する。

  4. URLをオリジナルのURLからテスト検証用URLに変更する。

  5. オリジナルのURLからテスト検証用URLへの一時的な302リダイレクトを追加する。
    Google Search ConsoleでURLを送信してインデックスを再作成して、この作業が完了した日をベンチマークの基準とする。

  6. 2週間~6週間待って、Google Search Consoleで同じ時間帯と曜日の変更前後のクリック数を比較測定する。

    • 例: 測定期間(変更後データ)が木曜日に始まって日曜日に終わる場合、Google Search Consoleで実験開始日直前(変更前データ)の木曜日から日曜日に終わる同じ期間と比較することを推奨する。ほとんどのウェブサイトでは、週末のクリックパターンは平日より低くなる。同じ曜日と時間帯を使うことで、こうした日々のクリックパターンの違いを制御できる。

    • 最適な期間は状況によって異なる。クリック数が多いページは2週間ほど測定すればいいが、クリック数が少ないページはそれより長い期間にわたって測定する必要がある。

    • 注意: このページのリスクが高い場合は、最初の数日間だけ定期的にチェックして、パフォーマンスが予期せず低下しないことを確認した方がいい。

  7. パフォーマンスの測定では、Google Search ConsoleのURLの「比較」機能を使用する。
    これにより、オリジナルとなるURLと検証用URLの両方を同時に確認できる。

  8. どちらのURLのパフォーマンスが高いかについて、方向性を決めるのに十分なデータを収集したら、次のいずれかを行う:

    • 新しい検証用URLのほうがパフォーマンスが高い場合: 一時的な302リダイレクトを恒久的な301リダイレクトに変更し、すべてのサイト内リンクを更新して新しいURLを反映させる。

    • オリジナルのURLのほうがパフォーマンスが高い場合: 302リダイレクトを削除する(※インデックス再作成の処理を迅速化するために、効果がなかった検証用URLからオリジナルのURLに戻る新しいリダイレクトを追加するのも良い)。

  9. Google Search Consoleで最終的なURLを再送信し、テスト終了後も定期的にパフォーマンスを監視して、プラスの状態が維持されていることを確認する。

② コンテンツの更新

コンテンツの更新は当然のことではないのか? SEOにとって良いことはわかっているのに、なぜテストする必要があるのだろうか?

確かに、コンテンツの更新は非常に重要であり、幾度となく成果が証明されている施策だ。しかし、コンテンツの更新すべてが常に良い結果をもたらすとは限らない

あまり一般的でないとはいえ、コンテンツ更新によってトラフィックが失われることもあるし、苛立たしいことに、どちらとも言えない結果になることも多い。つまり、コンテンツの再作成や再公開に貴重な時間とエネルギーを費やしても、意図した結果にならない場合があるということだ。

このような理由から、こうしたプロジェクトへの投資によって、期待した良い結果が得られているかどうかを見極めることが重要だ。この見極めにSEOのテストが必要になる。

コンテンツ更新のSEOテストを実行する方法

  1. コンテンツチームのワークフローに従い、通常と同じようにコンテンツ更新プロジェクトを実行する。
    元のコンテンツに戻す必要がある場合に備えて、元のファイルは必ずすべて保存しておこう。

  2. 再公開日に、Google Search ConsoleにページのURLを送信してインデックスを再作成し、その日付をベンチマークの基準とする。

  3. 2週間~6週間待ってから、Google Search Consoleで変更前のクリック数と変更後のクリック数を測定する。

    • 繰り返すが、測定に最適な期間はページごとのクリック数によって異なることに留意してほしい。
  4. どちらのURLのパフォーマンスが高いかについて、方向性を決めるのに十分なデータを収集したら、次のいずれかを行う:

    • 変更後のコンテンツのほうがパフォーマンスが高い場合: おめでとう! チームに結果を報告し、コンテンツは変更したままにしよう。

    • オリジナルのコンテンツのほうがパフォーマンスが高い場合: 元のコンテンツとファイルを復活させる。その後、ページを再クロールさせ、継続してパフォーマンスを観察し、トラフィックの回復を確認する。

おまけ:SEOテストの測定方法

SEOの実験をするためのステップバイステップの測定プロセスやテクニックについては、この記事では範囲外なので説明しない。しかし、次のように思う人もいるだろう:

SEOの実験を最初から最後までやってみるには、具体的にどうすればいいのか。

そこで、SEOに関する実験の設定や測定について、重要なことを詳しく知るのに役立つリソースへのリンクを以下でいくつか紹介するので参考にしてほしい(いずれも英語のみ):

今回紹介した各実験では、時間ベースの測定テクニックを想定している。A/Bテストの手法でテストできるものもあるが、すべてがそうとは限らない。

時間ベースの手法に興味がある人は、このガイドで詳しく説明しているので、チェックしてみてほしい。

前編では「実は試す価値のある5つのSEOテスト」のうち、「① URLの変更」と「② コンテンツの更新」について説明した。後編となる次回は残る3つ、「③ セクションの配置替え」「④ コンテンツの削除」「⑤ 強調スニペット」を紹介する。

→後編を読む

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