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Googleに買収されたスタートアップの元CEOが「Googleに買収されると一体どうなるのか?」を証言

by Thomas Hawk

2013年にGoogleに買収されたマップアプリ「Waze」の開発企業でCEOを務めていたノーム・バーディン氏が、2021年にGoogleから退職しました。そんなバーディン氏が、よく質問として寄せられる「なぜGoogleを辞めたのか?」に答えつつ、Googleで働いた7年間を振り返っています。

Why did I leave Google or, why did I stay so long? | Paygo
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2013年にGoogleから買収の話が舞い込んだ当時、WazeのCEOだったバーディン氏は失敗の連続から会社の株式の多くを手放してしまっており、会社の役員らとの関係にもわだかまりがあるという状況でした。そのため、バーディン氏は「今の役員よりGoogleの生みの親であるラリー・ペイジ氏の元で働いた方がいいのでは?」と思うようになったとのこと。


Google側がWazeの独立性を確約してくれていたこともあり、バーディン氏は資金繰りに苦しまされることなくWazeの開発を進めるべく、会社をGoogleに売却することを決意しました。その結果、バーディン氏率いるWazeのメンバーは肩書こそGoogleの従業員になりましたが、Googleとは独立したチームとしてWazeの開発を続けることができました。

しかし、Googleに吸収されたことで、以下のような思わぬ障害に直面するようになったとのこと。

◆アプリを踏み台と考える社員
Wazeのようなスタートアップでは、企業のブランドと製品やサービスの間には一貫性があり、従業員や経営陣、投資家は同じ目的を共有しています。しかし、Googleのような大企業で働く従業員にとって、個々の製品はキャリアアップの道具にすぎず、情熱を注いだり使命感を持って仕事に当たったりするようなものではないとのこと。そのため、Wazeの開発チームも「Wazeは骨を埋める場所ではなく単なる踏み台」と考えるような社員をメンバーに迎えざるを得なかったと、バーディン氏は振り返っています。

◆ワーク・ライフ・バランス
また、ワーク・ライフ・バランスの考え方にも大きな隔たりがありました。Wazeが起業したころ、そもそもソフトウェアの開発現場にワーク・ライフ・バランスという考え方はなく、Wazeの開発チームもアプリの開発に心血を注ぐのが当然だと思っていたとのこと。しかし、Googleでは個人の生活を優先させることが当然だと考えられていたため、バーディン氏は「今日は早く帰る」「ヨガ教室の方が優先」といった理由で会議のスケジュールを変更することにうんざりさせられることになりました。


政治的正しさ(ポリティカル・コレクトネス)の問題
バーディン氏の性格に起因する問題もありました。というのも、バーディン氏はGoogleの中では直情的な方だったため、しばしば口を滑らせてしまうことがあったとのこと。そのため、Googleのイベントや会議に出席してうっかり不適切な言葉づかいをしてしまい、Googleの人事部からにらまれるようになりました。バーディン氏は、こうしたGoogleでの慣習について「Googleではポリティカル・コレクトネスが金科玉条になっており、発言の内容より言葉づかいの方が重要です。何か間違った単語を1つでも使えば、人事部から雷が落ちてきます」と述べています。

◆労働環境への欲求の高さ
Wazeの開発チームも、Googleの企業風土にのまれていくようになりました。Googleは社員食堂で食事を提供しており、健康的でおいしい食事が無料で食べられるようになっています。WazeがGoogleに買収されて間もない頃、Wazeの開発チームが食堂で昼食をとっていると、Googleの社員が「また寿司か」と文句を言っているのが聞こえたので、Wazeのメンバーはそれを内輪の笑い話にしていました。しかし、数カ月もしないうちに、バーディン氏はWazeのメンバーがメニューに不満をこぼすのを耳にするようになったそうです。


他にも、Googleの一員になったことで他社との協力関係に制約が生じたり、法務やプライバシーポリシーなどユーザーに直接貢献しない仕事が急増したりといった問題が、バーディン氏を悩ませるようになりました。

こうした問題について、バーディン氏は「さまざまな擦れ違いの積み重なりで、私はおかしくなりそうでした。私は毎日の終わりに『自分は今日、ユーザーのために何をしたのか?』を自問していましたが、自分がしていることが恥ずかしくてその習慣がおっくうになったことに気付いた時、『自分は終わってしまった』と痛感しました」と述べています。


一方、バーディン氏はGoogleにWazeを売却したことについては「私はGoogleの中で達成したことを誇りに思っていますし、Wazeの売却も成功だったと確信しています。問題は私でした」とコメント。細かな擦れ違いが7年の間に蓄積し、疲れ果ててしまったのが退職の理由だと明かしました。

また、売却を決意した2013年の自分へのアドバイスとして「Google内でイノベーションを起こそうと躍起にならず、さっさと会社を辞めてイノベーションを達成できるチームを作ることに専念することをオススメします。とはいえ、口で言うのは簡単でも、自分の会社と会社の使命を愛している人には難しいことでしょう。それでも、会社の売却を決めた時に、自分の時代は終わったと正直に認めて、自分が会社を引っぱっていけるなんて考えないようにするべきでした」と述べました。

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in メモ, Posted by log1l_ks

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