文春オンライン

突然流行の音声SNS「Clubhouse」で繰り広げられる修羅と欲望の見本市

2021/01/31
note

 アメリカ西海岸で音楽向けのレコメンドSNS的に流行を始めたアプリ「Clubhouse」が、我が国でも目下凄い勢いで会員数を増やしています。

 何が凄いかって、一度会員になっても2人までしかSNS加入の招待を出せないという敷居の高さ、あくまで音声チャットなので活字として残らないばかりかアーカイブもできずに参加者の会話だけが流れていく、そして実にアメリカンな感じの洗練されたデザイン……。ああ、これはウケる。ウケるんだ。そう思ったわけです。

©️getty

そこは、談話室ルノアールでした

 私もさっそくご招待を戴いたので参戦……と思いきや、最初やってきた招待のSMSを見たとき、「なんだ、このいかがわしいサービスは。音声でやるSNSとか興味ない。毎日毎晩子どもたちがしでかす兄弟喧嘩の声やらご近所の叫び声ばかりでいまさら音声で繋がりたくないわ。削除や削除」ということでスルーしておったのです。

ADVERTISEMENT

 そしたら、なんか突然人気になってるじゃないですか。なんだよ、みんなやってる人気のサービスなのかよ。最初からそう言えよ。削除しちゃったよ招待状。もう一回くれ。え、駄目なの。なんでなんで。その後、親切な知己の女性から再び招待を貰って入ってみたんですよね。

 そしたらそこは、談話室ルノアールでした。

これはなかなかの刺激物

 なんかね、ウェブ界隈でお馴染みのメンツが業界話に花を咲かせていたかと思えば、向こうのほうで我が国の低質なスタートアップ界隈の皆さんが集って投資話をしている。そうかと思えば、別のルームでは仮想通貨は儲かるんだと力説する教祖とその話を聞きたくてオーディエンスになってる養分の皆さんが1,000人ぐらい集まって集会をやってるんです。

 また別のルームでは「公開pp活 準備室」なるタイトルが流れてきて、うら若い女子大学生2人が、リスナーになっているおっさんを一人ずつ指名で呼んでおしゃべりして、フィーリングが合わないと部屋から追い出すという実に淫靡な感じの空間が広がっています。そういう刺激的なタイムラインがルーム案内と共に埋め尽くされると、まさに瞬間瞬間でザッピング可能な素人ラジオみたいになるんですよね。

©️iStock.com

 さらには、聞き覚えのあるマルチでなんとかステータスになっているというマネージャーの人が、Clubhouseで若い(であろう)参加者たち相手にセールスをやっていて、最初興味を持ってちくちく見物に行っていたけどこれはなかなかの刺激物です。修羅ですよ、これは。ルノアールみたいな。そのうちガラケーとファックスで不動産取引をやってるおっさんとかまで、ルーム立てて地面図開いて商談とか始めかねない。