玉ねぎがなくても、おいしいカレーはできる
カレーを作る時に欠かせない材料といえば玉ねぎ。
時間をかけて火を入れて、茶色から飴色になるまで炒めたものは、おいしいカレーには欠かせないとされていますし、私もカレーを作る時は玉ねぎを炒めるところから始めます。
「カレー=玉ねぎ」と考える人は多いと思います。
ある日、カレーを食べたいなと思いました。
冷蔵庫を見たら玉ねぎがなかったから、スーパーへ買い物に行って玉ねぎを購入したのですが、レジ横でおばちゃんたちが会計が終わったキャベツの外側の青いところをむいて捨てているのを目にしました。
▲2、3枚捨てちゃいますよね
ふと疑問に思いました。
なぜ捨てるのだろう。
私は馴染みの八百屋さんで「なんで青いところを捨てちゃうの?」と聞いたんです。答えは「農薬の残りや表面の汚れが気になるから」とのこと。
一番外側の葉を捨てる理由は納得したのですが、その下の2枚目の青い葉まで捨ててしまう理由は「食感が悪いからでは?」と。
もったいないと思ったと同時に、捨ててしまうはずのキャベツの青いところを使ってカレーを作ってみたら、どうなるだろうと考えたのです。
……まさかあんなにもうまいカレーができるとは、その時は考えもしませんでした。
キャベツの力を信じて欲しい
▲今日の主役はこの子です
キャベツを使おうと思った理由はもう一つあります。
カレーに玉ねぎを入れる目的はたくさんありますが、大きな狙いは、味に深みと甘みを出すことかと思われます。
ありきたりなカレーに市販の炒め玉ねぎペースト(あるいはチャツネ)を入れるとグッとうまくなることがありますよね。あの理論です。
たくさん入れれば、それだけコクも出ます。
▲季節で値段は変わりますが、いつだって庶民の味方です
というわけで今回、キャベツを使うわけですが、「本当にカレーになるのか」という疑問をお持ちの方がいたとしたら、私は今すぐ駆けつけてハグしたい。
そしてあなたには人を信じることを教えたい。「玉ねぎと同じ役割なんてキャベツには荷が重い」って誰が決めたのか、それは私たちです。
キャベツの糖度は平均7度、冬にはなんと平均10度近くなるというデータがあるそうです。
これはスイカに近いとか。ちなみに玉ねぎの糖度(平均5度〜10度)とほとんど変わりません。
では、実際に作ってみましょう。
「キャベツカレー」の作りかた
▲キャベツの葉を1枚ずつむいていきます
【キャベツカレー・材料】(2人前)
(スタータースパイスとして。クミン以外はなくても問題なし)
- クミン(ホール) 小さじ1
- マスタードシード あれば小さじ1/2
- カルダモン(ホール) あれば小さじ1
- クローブ(ホール) あれば小さじ1
- シナモン(ホール) あれば2かけ
- 唐辛子(ホール) あれば2本
- キャベツ 200g
- サラダ油 大さじ1
- 鶏ガラスープの素 小さじ1
- しょうゆ 50ml
- みりん 50ml
- 水 200ml
- カレー粉 小さじ1~2
- ごはん お好みで適量
キャベツの外側の葉と、硬い芯の部分を使います。芯って上手に料理に使うの難しいですよね。このレシピではここぞとばかりに活用します。
▲念入りに洗います
最初によく洗います。農薬を洗い流すことにもなりますし、虫がいることもあります。無農薬だったら、一番外側の葉っぱから使っても大丈夫です。
洗った後のキャベツはしっかりと水気を切ってください。
▲キャベツはざく切りにしましょう
今回は食感を生かしたカレーにする予定なので、葉は1〜2cm大の大きめカットで問題ありません。芯の部分は少し細かくカットします。これを炒めていきます。
▲スタータースパイスはクミン、マスタードシード、カルダモン、クローブ、シナモン、唐辛子
最初にサラダ油でスパイスを炒めます。
私は無類のカレー好きなので、自宅にいろいろなスパイスが常備されているのでこんな感じになりました。
「インドのセレブか」というツッコミが聞こえてきそうですが、もちろんそんなことはありません。私を含めた日本の庶民の皆さまには、せめてクミンを使っていただけると、おいしいカレーになることを約束します。
ちなみにクミン(ホール)はスーパーで200円ほどで購入できます。
▲しばらく炒めるとこんな感じにしんなりしてきます
数分炒めたらこんな感じになりました。
冬から春に採れるキャベツは甘いので、そこまで根気強く炒めなくても大丈夫です。
一般的なカレーでしたら、このあと豚ひき肉などを入れ旨味と深みを追加して「間違いない味」にもっていくのですが、今回はキャベツのポテンシャルを確認すべく、具材はキャベツオンリーで最後まで作りたいと思います。
▲味の奥行きを出すために、鶏がらスープの素を小さじ1追加しました
肉や魚が入らないカレーって(例えば野菜カレーですね)シンプルでおいしいんですけど、ごはんと合うように仕上げるのがとても難しいんです。
というわけで、今回は鶏がらスープの素を追加。
好きな子に告白する前にストロングゼロを一気飲みするくらいのギリギリ許されるドーピングです。
鶏がらスープの素を入れ軽く炒めたら、カレー粉を投入します。
▲カレー粉を入れて、味付けをします
カレー粉を入れたら、さらに炒めます。
こうするとスパイスの香りがよく立つからです。このあと味付けなのですが、今回はちょっと変化球で、しょうゆ・みりん・水をフライパンに投入します。
「カレーにしょうゆとみりん!」と驚いた方は、騙されたと思って一度トライしてください。
カレーは懐の深い食べ物ですから、何を入れたって、「おいしくなれ」と強く念じれば最後はカレーになるんです。さて、水分が沸騰したらできあがり。
しょうゆとスパイスのいい香りが部屋中にただよいます。
出来上がりました
▲なんというかもう、キャベツですよね
プレートに盛り付けました。とろみは皆無のサラサラカレーなので、汁が溢れない深皿を使うといいでしょう。
味が濃いのでごはんとの配分は食べながら調整してください。
ごはん1膳に対して、先程のカレーを1/2ほど盛り付けました。
フライパンで2人前が出来上がったことになります。
さてお味はいかがでしょう。
▲うまそうじゃないですか
最初に結論を言わせてください。
とてもうまい。
キャベツの甘みと、スパイスの刺激がいい具合にミックスして、口の中で和音を奏でます。ドとソの完全5度のような見事なハーモニーです。
大きめにカットしたキャベツは食べ応えもありいい感じ。しょうゆとスパイスが、キャベツの甘さを引き立てていることを痛感します。
スイカに塩をかけるのと同じ理論ですね。
そして、しょうゆとみりんのお馴染みの味付けにカレー粉とスパイスが重なると、こんなにも複雑な余韻を残すことにびっくり。ひき肉を入れたらもっともっとおいしくなることでしょう。
▲お皿が小さく見えるのは、私の顔が大きいから。いわゆる錯視です。ヘルシーで最高の昼ごはんになりました
キャベツってこんなに甘くておいしいんだ。すごいぞキャベツ。うまいぞキャベツカレー。その実力、恐るべしです。
安くてうまい、キャベツカレー。みなさまもぜひ、お試しください。
書いた人:キンマサタカ
編集者・ライター。パンダ舎という会社で本を作っています。 『週刊実話』で「売れっ子芸人の下積みメシ」という連載もやっています。好きな女性のタイプは人見知り。好きな酒はレモンサワー。パンダとカレーが大好き。近刊『だってぼくには嵐がいるから』(カンゼン)